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18着に負けたダービーの誘導馬に。
サクセスブロッケンが遂に叶えた夢。 

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カジリョウスケ

カジリョウスケRyosuke Kaji

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photograph byRyosuke KAJI

posted2020/06/06 08:00

18着に負けたダービーの誘導馬に。サクセスブロッケンが遂に叶えた夢。<Number Web> photograph by Ryosuke KAJI

「日本ダービー」のゼッケンを12年ぶりにまとったサクセスブロッケン。

「ブロッケン、どうするの?」

 繊細なサラブレッドにとっては無観客開催は落ち着きを保ちやすい環境である。

 とはいえ、観客がいなくてもダービーには独特の緊張感がある。町田の言葉を聞いた葛原は「行けるなら行きたい」と思っていたが、大舞台に挑みたいという想いと責任の重さの間でまだ揺れてもいた。

 ダービーウィークまで2週間となったある日、週末のヴィクトリアマイルにむけた誘導練習を前に、東京競馬場の業務課のメンバーが事務所に集まっていた。

 無観客開催が長引くにつれて、彼らの中で「ファンを競馬場に迎え入れられないけれど、少しでも競馬を楽しんでもらいたい」という思いが強まっていた。そのとき、町田の伝言が共有されたのを機に次第に声があがった。

「ブロッケン、どうするの?」

「行かないんですか?」

「行きましょうよ」

 サクセスブロッケンがダービーで誘導する姿は、競馬場に足を運べないファンをきっと勇気づけられるはず。同僚たちの言葉に後押しされた葛原は決心した。

「わかりました。挑戦します!」

馬に緊張を伝えないように。

 5月31日、迎えた日本ダービー当日。サクセスブロッケンは午前中の誘導と、11Rのダービーの誘導を担当することになった。

 葛原は馬に緊張が伝わることのないように普段通りに接し、ダービーの時間が迫ってもサクセスブロッケンは非常に落ち着いていた。大丈夫だ。葛原とスタッフはいつものように馬装をし、"日本ダービー"の文字が入ったゼッケンをサクセスブロッケンは12年ぶりに身に纏った。

【次ページ】 次は、大観衆の前で。

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サクセスブロッケン

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