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初ダービー14着惨敗から22年後、
福永祐一の成熟と二冠コントレイル。
posted2020/06/01 19:00
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph by
Kyodo News
5月31日に行われた東京優駿、通称日本ダービー(GI、3歳、東京競馬場、芝2400メートル)を優勝したのは福永祐一騎手(43歳)が騎乗したコントレイル(栗東・矢作芳人厩舎)だった。
父ディープインパクト同様、無敗の二冠馬となったコントレイル。福永騎手は2度目の戴冠となった。
1998年キングヘイローの苦い記憶。
同騎手が初めてダービーに騎乗したのは1998年。ちなみにこの年の年度代表馬はタイキシャトル。夏にフランスでジャックルマロワ賞(GI)を優勝し選出されたのだが、その約2カ月半前、福永騎手はキングヘイローに乗ってダービーに臨んだ。
同馬は3歳の頂点を決める大一番で2番人気に支持された。しかし結果は14着と惨敗。逃げて最後の直線ではズルズルと馬群に沈んでいった。レース後の福永騎手は声をかけるのもはばかられるほど顔色をなくしていた。後に当時の話を伺うと、次のように答えたものだ。
「顔色が白いのはいつもの事だけど、あの時、放心状態になっていたのは間違いありません。ダービーの雰囲気に自分自身のみ込まれてしまいました。逃げるつもりではなかったのに、ゲートが開いたら先輩ジョッキーからいただいていた助言も何もかも吹っ飛んでしまいました。直線、脚が上がって沈んでいく時は『あぁ~』っていう感じで何も考えられませんでした」
当時まだ21歳の青年ジョッキーには明らかに荷が重かった、と分かるコメントだ。
それでも、その後も彼はダービーでの乗り鞍に恵まれた。翌'99年こそ怪我で騎乗出来なかったが、以降は毎年のようにこの大一番に声がかかった。