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短縮シーズンと議論百出の背景。
MLBは金儲けより「治癒効果」を。 

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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posted2020/05/23 11:00

短縮シーズンと議論百出の背景。MLBは金儲けより「治癒効果」を。<Number Web> photograph by Getty Images

2019年6月、ロンドンに向かうレッドソックスの選手。今年もロンドンでカブスvs.カージナルスのカードが予定されていたが、中止となった。

ニューヨーク州知事も「無観客試合ならば」。

 私は前回のコラムで、今年の短縮シーズンがアリゾナやカリフォルニアでの「地域限定・無観客試合」の方向に進むのではないかと予測した。ニューヨーク州やイリノイ州などコロナ禍の被害が大きかった地域では、ゲームの開催がむずかしいと考えたためだ。

 しかし、ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事が「無観客試合ならば」という条件付きで開催を認めた。新型コロナウイルスの感染者数が全米で最も多かった人口密集地域にゴーサインが出たとなると、他の地域が独自に反対するケースはまず考えられない。

 まあ、無観客試合ならなんとか……という考えもよぎるが、ヤンキー・スタジアムやシティ・フィールド(メッツの本拠地)に隣接した地下鉄駅の混雑を思い起こすと、反射的に警戒心が湧き起こる。

トロントからマイアミまでは2000キロもある。

 82試合の内訳も、説明しておきたい。

 現在の大リーグは、両リーグとも、各地区5チームで編成されている。つまり、3つの地区は、それぞれ10チームずつに振り分けることができる。

 そこで、同リーグ・同地区の4チームとは13試合ずつ戦い(全52試合)、他リーグ・同地区の5チームとは6試合ずつ戦う(全30試合)ことにする。その合計が82試合になるというわけだ。

 ヤンキースを例に引くと、ア・リーグ東地区のレイズ、レッドソックス、ブルージェイズ、オリオールズとは13試合ずつ戦い、ナ・リーグ東地区に属するブレーヴス、ナショナルズ、メッツ、フィリーズ、マーリンズとは6試合ずつ戦うことになる。

 合理的に見えなくもない案だが、ひとつ気になるのは、トロント(ブルージェイズの本拠地)からマイアミ(マーリンズの本拠地)までの距離が約2000キロもあることだ。

 通常の旅客機なら3時間以上かかる。チャーター便とはいえ、万が一、選手や球団職員の間に新型コロナウイルス感染者が混じっていたら、面倒なことになる。

【次ページ】 ポストシーズン進出チームの増枠の背景。

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