スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
短縮シーズンと議論百出の背景。
MLBは金儲けより「治癒効果」を。
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2020/05/23 11:00
2019年6月、ロンドンに向かうレッドソックスの選手。今年もロンドンでカブスvs.カージナルスのカードが予定されていたが、中止となった。
ポストシーズン進出チームの増枠の背景。
距離の問題は、西地区のシアトル(マリナーズの本拠地)とヒューストン(アストロズの本拠地)の間、中地区のミネソタ州ミネアポリス(ツインズの本拠地)とピッツバーグ(パイレーツの本拠地)の間でも浮上する。
前者は約3000キロ(旅客機で4時間半)、後者でも約1200キロ(旅客機で2時間)の隔たりがある。移動のプロが仕切るのだから問題は発生しないと信じたいが、リスクが増大することは避けがたいだろう。
もしかすると、どこかの球団が、なんらかの理由をつけて、本拠地以外の球場を仮のホームとする事態も生じる可能性はなしとしない。
ポストシーズン進出チームの増枠は、たぶん、オーナー側からの要請だろう。なにしろ、プレーオフは放送権などの実入りがよい。秋が訪れて運がよければ、観客動員も見込める可能性がある。
フォーマットの大枠を説明しておこう。
経済活動を優先させようとする姿勢がちらつく。
まず、各リーグを通して勝率1位の2球団は、無条件で地区シリーズに進出できる。
この2球団を除いた各リーグ・各地区の勝率1位チーム(6球団)、ならびに各リーグのワイルドカード(勝率上位の3球団×2リーグ=6球団)は、3本勝負(先に2勝した3球団が勝ち抜き)の形で、地区シリーズ(各リーグ4球団が出場)をめざす。
ちょっとややこしいが、これがポストシーズンに進出する14チームの内訳だ。下剋上の起こりやすいこの方式で、野球人気とビジネスを盛り上げようという算段だろう。
7カ月という長丁場を戦って優劣を決めるという大リーグ本来のスタンスからは外れた発想だが、苦肉の策と思えば受け入れざるを得ないかもしれない。
ただ、いくつかの提案を見ると、またまた経済活動を優先させようとする姿勢がちらつくのが気にかかる。ポストシーズンのいびつな拡張もその一例だが、オーナー側はここへ来て、「選手の年俸を半分にしたい」という声をあげているのだ。