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NBAスカウトから見た渡邊雄太。
忖度なしの評価、来季の動向は?
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byGetty Images
posted2020/05/08 11:40
依然としてリーグ再開の見通しが立たないNBA。2ウェイ契約の最終年を迎える渡邊雄太は岐路に立たされている。
渡邊にとって「Tweener」は褒め言葉。
ストロングポイントに対する称賛の羅列を見れば、スカウトは渡邊の多才さに高評価を与えていることがわかる。スキル、スピード、身体能力を満遍なく備え、フォワードの2つのポジションを献身的にこなすオールラウンダー。『中間の』といった意味を持つ“Tweener”はどこか中途半端な選手を形容する際にも使われるが、渡邊に関しては完全に褒め言葉だろう。
今季はGリーグでの平均得点を前年比で3.1もアップさせたが、自ら積極的に得点を狙いにいっているというまでの印象はなかった。シュート力、本人も自信を見せていたカットの上手さゆえ、流れの中で多く得点できるのが持ち味で、多才さと献身的な守備力を武器に、チームに足りない部分を補完する潤滑油的存在だった。
26勝15敗、ウェスタン・カンファレンス2位というハッスルの好成績は、渡邊の存在なしにはあり得なかった。プロ入り2年目にして、日本が誇るレフティはすでにGリーグではトップレベルの選手に成長したといっても大袈裟ではない。
スカウトが示した“課題リスト”。
もっとも、“NBAレベル”と考えた場合、まだ必要な部分が多いのも事実のようだ。スカウトが挙げた課題リストには、今季、グリズリーズでの平均プレー時間が昨季よりも少ない6.2分で終わってしまった理由が端的に示されている。
・クイックネスを犠牲にすることなく、馬力、フィジカルを強化する必要がある。1年目はフィジカル面でNBAでは準備ができていなかった。今季は向上したが、強靭なPFにインサイドで対処するのはまだ厳しい面もあった。
・守備面ではペリミーター(ペイントエリアの外側から3Pラインの内側まで)でのスイッチに対応し、多くのジャンプシュートをストップできるものの、クイックネスに秀でたガード選手への対応に苦しむことがあった。また、6-8(約206cm)の身長がありながら、Gリーグでの平均リバウンドが6以下というのは物足りない。リバウンドには向上の余地がある。
・現状でもパス力、ボールハンドリング力が及第点なのはすでに記した通り。ただ、ドリブルは直線的に過ぎる傾向がある。ボディタイプを考慮すればやはりSFが最もフィットするポジションだけに、ボールハンドリングをさらに向上させれば、SFでのプレー時にプレーメイキングをこなすこともできる。
・痩せ型の体型を考えれば、より安定した形で3ポイントシュートを決めなければならない。今季のGリーグでの成功率は35%を超えたが、決まる日とそうではない日の差が激しかった。NBAで活躍していくために、この部分の向上は必須。逆に言えば最も成長が望める部分でもある。