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あだち充漫画のキャッチャーの魅力。
「太めで長打力」からイケメンへ。
text by
松尾奈々絵(マンガナイト)Nanae Matsuo
photograph by(c)あだち充/小学館
posted2020/05/08 19:00
あだち充作品の表紙は主役級しか登場しないため、『MIX』の立花走一郎は初めてコミックスの表紙に登場したキャッチャーでもある。
ついにキャッチャーが「足の速いイケメン」に。
そして現在連載中の『MIX』では、キャッチャー像が大きく変化したことが目を引く。言葉を選ばずにいえばキャッチャーが「足の速いイケメン」になったのだ。
『MIX』の舞台は、『タッチ』から約30年後の明青学園。すっかり低迷した明青学園の野球部に入部した、同い年の義兄弟である立花投馬・走一郎たちが、甲子園出場を目指す物語である。
投馬がピッチャー、走一郎がキャッチャーを務める。タッチで言えば上杉和也がキャッチャーをしているようなもので、ファンの間には「走一郎は大丈夫なのか」とハラハラしている空気もある。
「キャッチャーの成長」が描かれる?
キャッチャー像が変わったことの楽しみは、これまであまりなかった「キャッチャーの成長」が描かれるのではないか、という部分だろう。
過去の作品ではキャッチャーは「メイン」のステージにはおらず、脇役として話を支える存在だった。それが今作では「もう1人の主人公」になったことで、恋愛関係がどうなるのかも気になるが、キャッチャーとしてどう変化し、成長するかも見所だろう。
「あだち充作品は主人公の顔や展開が一緒」と言われることがあるが、読んでいくと、実際はテーマや価値観が作品ごとにアップデートされているのがわかる。今回取り上げられなかった『クロスゲーム』も含めて、読み返すたびに発見があり、キャッチャーの変化もその1つに過ぎない。
まずは『MIX』がどんな物語になるのかを見届けたい。個人的には、走一郎の活躍を切に願う。