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シェルバコワの衣裳が一瞬で変わる。
その秘密をデザイナーに直接聞いた。
text by
いとうやまねYamane Ito
photograph byAsami Enomoto
posted2020/05/06 15:00
2019-2020シーズン、シェルバコワはFSの演技中、衣裳を青から赤に一瞬で変えていた。
「デザインは音楽そのものから受けた印象です」
イギリスのロックバンド、ミューズの『エクソジェネシス:交響曲第3部』は、今シーズン、エフゲニア・メドベージェワのSP、若手ナンバーワンで北京五輪の優勝候補ではと期待されるカミラ・ワリエワのFSで使用され、2人はともにミレーナ・ボブコワのデザイン衣裳を身に着けることになった。
その話を振ると、少し戸惑ったような答えが返ってきた。おそらくその質問を他でも多く受けているのであろう。
「確かに同じ曲ではありました。でも、なぜそれらを比較するのでしょう。まるで考えませんでした。たとえ偶然に同時期のデザインになったとしても、両者はそれぞれに個性的です」
――はじめにカミラ・ワリエワの衣裳ですが、発想は曲の内容と関係ありますか?紫と青の美しい多層ドレスは蝶の脱皮を連想しました。
「デザインは音楽そのものから受けた印象です。
カミラの衣裳はクロッキーの段階で蝶のイメージが浮かびました。色合いや光、エアリー感、ふわっと舞い上がるような無重力感……。他のオプションを持たないほどにイメージがはっきりしていました。
スケッチに素材サンプルを付けてエテリ(トゥトベリーゼ・コーチ)に提案しましたが、とても気に入ってくれました」
ジュニア選手の衣裳では素材の伸縮性を考慮。
――体の成長期にある若い選手のデザインで苦労する点はありますか?
「ジュニア選手の衣裳で特に考慮するのは素材の伸縮性です。これは演技に直結します。
装飾要素はすべてハンドメイドですが、デザイン上ラインストーンは外せません。その煌めきで視線を集中させると同時に、衣裳全体の印象を豊かにしてくれます。
もちろん重すぎてはいけません。この衣裳には大小約3500個のラインストーンが施されています」
――デザインと制作にかかった時間はどれくらいでしょうか?
「カミラの衣裳は約1か月。カラーは手染めです。フィッティングの際にエテリからいくつかの修正を求められました。カミラはとても喜んでいました。彼女との作業がとても好きです」