笑顔でシーズンを過ごした理由。

「何度も心が折れそうになりましたけど、このままで終わってたまるかという気持ちだけでした。結局、得るモノはなかったシーズンでしたけど、学ぶことが多かった。無駄な1年だとは思いませんでしたし、自分としっかりと向き合える時間はありました。これを今季どのように活かすことができるか」

　桑原が苦しい立場にありながら、笑顔を崩さずシーズンを過ごしたのには理由がある。それは一昨年、レギュラーの立場を失った際、喜怒哀楽が如実に出てしまったという反省があった。当時、桑原は次のような話をしてくれた。

「まわりからよく言われるのは“顔”のことなんですよ。僕がダメなときって、そういった部分がすごく表情に出るらしいんです。背中を丸めているような姿を見せたくはないし、いつも元気な自分を見せることができるようにしないといけないなって」

思うようにバットが出ず、重ねた凡打。

　桑原の昨季の振る舞いはこのような反省ゆえのものだったが、心の部分における動揺はバッティングに現れてしまっていた。ピッチャーの呼吸まで読んで、惑わされることなく自分のタイミングでバットを強振するのが桑原の持ち味であるが、昨シーズンは思うようにバットが出ず、ボール球に手を出し凡打を重ねた。メンタル面が大きく影響していたと桑原は自身を省みる。

「感覚的におかしいなって思うところはありましたし、いつもフワフワとした自分がいたんです。今日は試合に出られるのか、どうなのか気にしてばかりで……。心の準備がきちんとできていないということですよね。そういう風に思ってしまった自分が情けない」

　桑原は真剣な面持ちでそう語ると、「けれどですね……」と言葉をつづけた。

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