マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
夏の甲子園に監督、選手たちは?
もし高校球児に選手会があったら。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byHideki Sugiyama
posted2020/04/25 08:00
選手たちに発言の機会があったら、彼らはどんな結論を出し、どんな発信をするのだろう。
勉強に専念する選択肢を提示する進学校も。
一方、バリバリの進学校で野球部の指導にあたる監督さんの話には、正直ちょっと驚いた。
「ウチの野球部には、東大や医学部を目指す生徒が3年生に何人かいるんですけど、この前、彼らを呼んで話をしました。夏はないと決めて勉強に専念してもよし、練習続けて夏に賭けるのもよし。家族とよく相談して自分で考えて、どっちか納得いく方を選ぶように、1日1日を中途半端に過ごさないようにって。
悲しい予断ですけど、こういう時は僕たちだけでも冷静になって現実的にならないと。彼らは、甲子園以上の難関に挑もうとしてるんですから」
また別の若い指導者は、甲子園開催を信じているという。
「夏はなくなりませんよ。日本の夏は、高校野球があってこその『日本の夏』ですからね」
そこまで言ってグッと詰まったが、こう続ける。
「悪いことは考えないようにしてます。万が一そういうことになっても、自分ぐらいの人生経験では、選手たちにかける言葉が見つかりませんよね」
では、選手たちは実際どう思うのか。
では肝心の「主人公たち」はどんな思いで過ごしているのか……訊いてみようと思った。
しかし、さすがに現役の3年生に訊くのはあんまりだと思ったので、ちょっと前まで高校球児だった大学生に気持ちを想像してもらうことにした。
「センバツが中止になった時に“代替案”っていう話があったんですけど、センバツの代わりは、絶対にセンバツしかないんですよ。これ、やってるもんにしかわからない気持ちだと思いますけど……」
そうですねぇ……と唸ってから、ここまで話すのにだいぶ時間がかかった。
「高校野球なんて、3年の夏のために3年間頑張ってるようなもんじゃないですか。自分は去年の夏まで高校野球やってましたからわかるんですけど、夏は何がなんでも、体が壊れてもやりたいんです」