マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
2020年ドラフトを1人で予想2/3。
広島は大砲、阪神はバッテリー重視。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2020/04/14 08:00
苫小牧駒大の伊藤大海は2020年ドラフトの目玉の1人。MAX155kmは伊達ではない。
昨年の1位・2位が成功した楽天は。
〔東北楽天ゴールデンイーグルス 2020年ひとりドラフト指名選手〕
外れ 三塁手 佐藤輝明(近畿大) 186cm92kg 右投左打
1位 投手 栗林良吏(トヨタ自動車) 177cm78kg 右投右打 24歳
2位 投手 中川颯(立教大) 184cm80kg 右投左打
3位 投手 宇田川優希(仙台大) 184cm95kg 右投右打
〔総評〕
遊撃手・小深田大翔、二塁手・黒川史陽。昨年のドラフト1位、2位がなんとなく、近未来の「二遊間」を形成しそうなムードが出てきたので、「三塁手・佐藤輝明」で磐石な見通しを作りたかったところが、残念ながら抽選は負けとなった。
近畿大・田中秀昌監督と楽天・三木肇監督、2人は上宮高の先輩・後輩で、ボクに任せてください!」、胸を叩いて引き受けたかった大器だった。
それでも、社会人から即戦力の実力No.1と評される栗林良吏を確保したのだから、そんなに捨てたものじゃない。
来季の「星勘定」だけで言えば、むしろ、栗林の投手陣加入のほうがチームのためになる。昨季パ・リーグ制覇の西武との勝ち星の差は、わずか「9」。栗林の実戦力次第では、一気に「ペナント」が見えてくる。
自分がマウンドに上がったからには、勝ちが見えるまで決してマウンドは譲らない。そんな心意気で、チームを担って投げられる気性が何よりの「才能」と見る。
ガツンとミットにこたえる捕球の衝撃。インパクトの破壊力十分の140キロ後半に、変化点が打者に近く、横に鋭く曲がるスライダーにカットボール、フォーク。
プロで勝負できる球種をいくつも持って、腰に不安の残る岸孝之、故障が続く則本昂大……という主戦のアクシデントの中で、彼らの位置までも狙える実力派だ。
2位にサブマリン、3位に素材型。
楽天は、ソフトバンク・高橋礼にさんざん痛い目に遭った。手足が長く、球持ちのよいアンダーハンドがいかに攻略困難なのかを思い知らされたはずだけに、2位に「同系」の中川颯を指名してみた。
地面から浮き上がってくるように見えるホップ系の速球は、打者目線では「高さ」が捉えづらく、ボールの上下を間違えて打ち損じる。
桐光学園当時は、打者として大成するのではと期待したほどの優れた野球センス。セーフティで揺さぶられても、見事なフットワークとスナップスローで片付ける。1年かけて体を鍛えたら、2年目からローテーションの期待もかけられる。
大学生でも、3位・宇田川優希は時間をかけて作っていくタイプと見る。
ブルペンでの投球なら、立派にドラフト1位だ。「野茂か」と思うような角度とねじ込みを兼備した剛球がうなる。
それが、実戦のマウンドでうなるようになるまでは、本人も辛抱、まわりはもっと辛抱だろう。そうする甲斐のある「逸材」であることは間違いない。
埼玉・八潮南高。無名の公立校でなかなか勝てなかった3年間。自信を持て! と言っても、そういう体験をしていない。ここから先、「成功体験」を少しずつ積み重ねて、自信も少しずつ感じられるようになって、そうなってきたら、あとは「ドドーン!」とブレークの瞬間を待つだけだ。
金属バットもへし折ってしまいそうな凶暴な球威なら、今年のドラフト候補の中で随一だろう。