バレーボールPRESSBACK NUMBER
石川祐希が今、大事にしている「欲」。
日本のリーダーになるための準備。
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byItaru Chiba
posted2020/03/24 19:00
公式インスタグラムでメッセージを発信した石川。「またみなさんの前でプレーできる日を、心から楽しみにしています」とリーグ再開後の活躍を誓った。
模範にしているキャプテン。
「自分がもしキャプテンだったらと考えると、正直、今の自分にはできることと、まだできないことがあると思います。たとえば、練習や試合のコートの中で、それぞれのコンディションやプレーを見ながら声をかけ、団結や士気を高めることは簡単なことではありませんが、今の自分にもできると思います。ただ、今回のような場合は、命にかかわることなので、想定外の状況を把握し、正確に伝えなければなりません。
そういった行動は、自信をもって『できる』とは今はまだ言えないですね。キャプテンになると全クラブのキャプテンが集まる会合にも出席し、その内容をチームメイトに伝えなければなりません。その点では現段階の自分の語学力では不可能ですし、それが出来るようになるためにはイタリア人並みにイタリア語を話すことが必須になります。バレーボールに限らず、一般的な知識ももっと勉強して増やさなければならないと思っています」
そういった意味で石川の1つの模範になっているのが、パドヴァのキャプテンを務めるドラガン・トラヴィツァの姿だ。
「コミュニケーションの取り方に関しても、日本とイタリアとでは異なります。そういった部分で僕はドラガン・トラヴィツァを信頼していますし、素晴らしいキャプテンだと思っているんです。彼の行動から、日々、『こういうときには、どう言えば伝わるのか』を見て、学んでいますね。彼は監督やGMと積極的にコミュニケーションをとっていますし、チームメイトの声を聞き、クラブに伝えて、『僕たちのために動いてくれている』と感じることが多々あるんです」
バレーボールの域を超えて。
正直なところ、クラブや仲間に対して、チームをけん引するためにどのようなアプローチをしていくべきか、現段階ではまだ具体的に描けてはいない。ただ……。
「これまではバレーボールのことで精いっぱいでしたが、ようやくバレーボールの域を越えて、自分の周囲や社会の状況を把握する余裕や理解したいという欲が出てきました。今はその感覚を大切にして、見て、学んでいきたい。そう考えています」
どんなに苦境に立たされようとも、決してあけない夜はない。その日が来るまで、石川は自らがやるべきことに集中するだけだ。平穏な日常が戻ったとき、また多くの観客の前でプレーするために。