プロレス写真記者の眼BACK NUMBER
世界最大のプロレス興行は何をする?
コロナ危機を逆手に取った演出へ。
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2020/03/23 11:50
タイトル戦に挑むドリュー・マッキンタイア。無観客試合で、果たしてどんなプロレスを見せてくれるのか?
豪華セットを組んだテレビマッチを!
このような状況ではレッスルマニアを開催できるわけがない。レッスルマニアは関連イベントを含めて世界90の国から約9万人がタンパを訪れると言われていた。無観客にしたところでスーパースター(選手)だけでその10倍の数になってしまう。
ついにタンパ市は「レッスルマニアとその関連イベントはタンパベイで開催されない」と発表した。
そしてWWEは「ローカルスポンサーと市当局と協議した結果、開催予定だったレッスルマニアとその関連イベントはタンパベイでは行われない」と公式に発表した。
だが、これはレッスルマニアの開催「決行」を同時にアナウンスするものでもあった。
タンパのスタジアムでの開催はなくなった……が、その代わりにフロリダ・オーランドのWWEパフォーマンスセンターからペイパービュー(PPV)とWWEネットワークでの生中継をすることにしたのである。
その試合はセンター内にセットを組んで、セット内は必要最低限の人数だけで世界に届けられるという。
1980年代のテレビマッチは酷かった……。
先日、結果的には開催されなかったが、3月18日に予定されていたサッカーUEFAチャンピオンズリーグのバルセロナvs.ナポリは無観客試合の条件として、10万人入るカンプノウ・スタジアムの中に入れるのは選手を含めて250人までと保健省から言い渡されていた。
それほどみんなピリピリしている現状だ。WWEが大きなスタジアムで無観客で試合を行えばイメージ的には逆に壮観だったろうが、パフォーマンスセンターからの配信は無観客という表現には当たらず、新たなテレビマッチの風景を世界中のファンは目撃することになるだろう。
かつて、いわゆるアメリカでの「テレビマッチ」と呼ばれるものは、スタジオにリングを持ち込んで十数人のファンを入れて2、3試合行うものだった。
筆者は1980年代にヒロ・マツダさんに案内してもらってタンパのテレビ局のスタジオでそのテレビマッチの現場を見たことがある。それはとても世界に流せるような内容のものではなかったが……。
だが、今度は特別中の特別だ。WWEがどんなセットを用意するのかは非常に興味深い。仕掛け満載の趣向を凝らした大がかりなセットが組まれることは間違いない。WWEがもっとも得意とするエンターテインメントの技術が改めてここに示されることになる。