炎の一筆入魂BACK NUMBER
佐々岡カープの雰囲気は“快晴”。
嫌われ役も鬼軍曹もいない組織作り。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKyodo News
posted2020/03/18 11:00
現役時代はカープ一筋18年、2015年からコーチを務めている佐々岡監督はカープの空気を知り尽くしている。
不安材料は「厳しさが足りない」?
今年の広島は投手陣の整備は必要だが、優勝を狙える戦力は十分整っているように感じる。優れた個の集団が、戦える組織、強い組織になるとは限らない。だが一方で戦力的に劣っていても、勝つ組織を作ることはできる。
優しさに溢れた佐々岡カープが新たなチームづくりのトレンドになる期待はある。ただ、筆者は昭和生まれゆえ、個人的に古い考えを捨て切れないからか「厳しさが足りない」点が佐々岡カープの不安材料にもなると感じている。
3連覇した緒方孝市前監督は選手に自由を与える一方で、一線を引いていた。嫌われ役を1人担い、チームに厳しさと緊張感をもたらしていたからこそ、選手間の結束が固まった側面もあったように感じる。
勝つ組織には、「嫌われ役」にもなれる「悪」も必要ではないのか――。
やらないといけないことはやりなさいよ。
時代は移り変わる。今ビジネスマンに「24時間戦えますか」などとはいえない。働き方改革がさけばれ、人材や働き方は多様化。人材をどう生かすかが、組織力を左右する。「つながり」「共感」「優しさ」の時代。SNSの普及により、つながりの強さが武器となり、「共感」を得てモノやサービスが売れる。お笑い界でも、昨年のM-1グランプリでツッコミが優しく肯定する「ぺこぱ」の漫才が注目を集めた。
時を戻そう。佐々岡カープ誕生とともに、入閣した横山竜士投手コーチは就任会見で“鬼軍曹”宣言したが、5年ぶりに復帰した現場で厳しさの変化を感じながら指導にあたっている。
「昔は何球投げるか、何秒内で走るとか強制された厳しさがあった。でも今は個々に合った練習、指導法がある。さまざまなトレーニング法や理論があるし、オフに他球団の選手と自主トレする選手もいる。選手がやりたいと思うこともあるだろうから、認めるところは認めないといけない。ただ、自分がやりたいことだけしか見えないのではいけない。野球人としてやらないといけないことはやりなさいよということ」