テニスPRESSBACK NUMBER
シャラポワ自伝の翻訳者が語る、
苛烈な言葉と繊細な内面の二面性。
text by
金井真弓Mayumi Kanai
photograph byAFLO
posted2020/03/12 20:00
コート上のシャラポワに「妖精」というニックネームは似合わない。彼女は誰よりもファイターだった。
これからも「Unstoppable」な人生を。
日本では『マリア・シャラポワ自伝』のタイトルで刊行されたが、本書の原題は「Unstoppable」である。「動きや勢いを止められない、阻止できない」といった意味だ。怪我をしてもドーピング疑惑をかけられても、シャラポワがテニスをすることは「誰にも止められない」ものだった。
だが、そんな彼女が「残るのはラケットだけ」と語ったラケットをコートに置く日が来た。ドーピング問題で記者会見をしたときに引退会見ではないかと噂され、「本当にわたしが引退を発表するときは、こんなにひどい絨毯を敷いたロサンゼルスのダウンタウンにあるホテルで行うことはない」と言ったシャラポワの引退は静かなものだった。
「I want to beat everyone」という激しい思いがなくなったとき、彼女は自分にストップをかけたのだろうか。強く美しいテニスを見せ、多くの人を虜にしたシャラポワ。彼女の人生はこれからも「Unstoppable」なものに違いない。