令和の野球探訪BACK NUMBER
センバツ21世紀枠・平田高校の強み。
植田監督が語る「目に見えない力」。
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byYu Takagi
posted2020/03/03 20:30
出雲高校を2016年夏の甲子園に導いた手腕を持つ植田悟監督。平田高校として初となる甲子園の舞台で、どんな野球を見せるか。
守備は“セットプレー”の概念。
ベースとなっているのは出雲高校での成功体験をバージョンアップさせたものだという。「県内で通用するパワーの野球では、甲子園で勝てない」として、そうしたパワーで勝る私学校らに対抗するためにも「投手対打者の1対1ではなく、束となって勝負していくこと」を重要視する。
打撃では、打者が走者を進めることに加えて、走者が塁上から相手守備陣にプレッシャーをかけて打者を助ける「走打連携」によって得点を奪う。
守備においては「9人による攻めの守備」。「野球は他の球技と違ってボールを保持している側が“守備”とされる特殊な競技」と話す。ただベクトルを変えれば、打者は1人だが守備は9人いる。だからこそ攻めていく。捕手のサインはセンターラインや外野だけでなく、一塁手や三塁手にも共有され、それによってシフトを敷く。
「野球は1回ずつ止まるので、サッカーなどでいうところのセットプレーの概念ですよね。この状況やサインならボールはここへ行く(可能性が高い)という想定のもとで野球をやるということです。そうして1人ひとりの役割を明確にして目の前のことに集中させるんです」
練習に対する姿勢で心に火を。
この「超集中」や「同調野球」と称する手法で、2016年夏の出雲高校では島根大会で益田東や立正大淞南を、昨秋の平田高校でも立正大淞南や開星といった戦力で勝る私学勢や、有力な公立校を破って勝ち上がっていった。
練習時間は多くないだけに多くの仕掛けも選手たちに施している。
「定期試験は年5回。それだけで(直前も含めた)約10日間×5回で50日は休みですし、普段の週1回の休みでまた50日。あと、なんだかんだで合わせると年間合計120日くらいは休みなんです。練習時間も平日は2時間、長くても3時間くらい。
練習量では勝てっこないわけですから、練習に対する姿勢やあり方だとか、選手たちの心に火をつけることを大切にしています」