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平昌と同タイムでは勝てない。
小平奈緒の五輪連覇への土台作り。
posted2020/02/28 07:00
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
AFLO
スピードスケートの今季ハイライトとなる世界距離別選手権が、2月13日から16日まで米国ユタ州ソルトレイクシティーで開催された。2年後の北京五輪を見据えて今季を「多くの実戦を通して強化を図るシーズン」と位置づけている小平奈緒(相澤病院)は、'07年の世界距離別選手権初参戦から14年目にして、初めての3種目出場を敢行。2日目の女子500mで3年ぶりに金メダルに輝くと、3日目の同1000mでは6位と表彰台を逃したが、最終日の1500mでは9年前に出した自己ベストを2秒58塗り替える1分52秒82で9位になった。
「500mはもう少し良く出来たのではないかというところを突き詰めていきたいし、1000mは振り返るべきことがたくさんあったので、感謝しなければいけない経験だった。1500mは最初は辛いかなと思ったけど、滑って良かった」
2年前の平昌五輪で金メダリストになり、'18年のオフは公式行事に引っ張りだこ。お世話になった方々へ感謝の気持ちを伝えるのも大切なことだからと、数を絞りながらもさまざまな場所へ足を運んだ半面、練習時間の確保が難しかった。その反動が出たのが昨季後半戦。2月の世界距離別選手権では左股関節に痛みが出た中で、女子500mのビッグタイトルを3年ぶりに失った。
ようやく取り戻した“ゼロ”の状態。
あれから1年。500mで李相花(韓国)の持つ世界記録(36秒36)の更新はまたお預けとなったが、しっかりと表彰台の真ん中に返り咲き、体力的にきつい最終日の1500mで納得のいく滑りをしたことは価値がある。「昨季は体に痛いところがある状態でなんとかしのいだので、今季はリハビリのシーズンとしてとらえて、夏にサポート体制を整えてもらった。そのお陰でようやくこうして“ゼロ”に戻れた」と小平の表情は明るい。
小平を指導する結城匡啓コーチは「北京では平昌五輪と同じタイムでは勝てない。五輪本番でどう速くするかを考えている」と言う。レース数を増やした意図も当然そこにある。
「北京五輪を終えたときに、今年の世界距離別選手権が意味のある大会だったと言えるように、これからの歩みが大切」。小平は五輪連覇への土台を着実に構築している。