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八村塁「日本人として誇りに思う」
渡邊雄太とNBAのコートに立つ意義。
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byGetty Images
posted2020/02/12 19:00
マッチアップこそ叶わなかったが、NBAの同じコートに立った八村(左)と渡邊。両者置かれる立場は違えど、今後も2人の動向に注目したい。
渡邊の“妨害”にも何のその。
渡邊との対戦で注目されたグリズリーズ戦では99-106で逆転負けを喫したが、自身の仕事は果たせていると言う自負は感じられた。また、この日は第1クォーター途中にグリズリーズのベンチ前で3ポイントシュートを決め、その際は渡邊からの“妨害”もものともしなかったのだとか。
「(八村が)コーナー(から)3Pを決めたとき、ベンチの目の前でドフリーになったので、後ろから思い切り叫んだんです。そしたらこっちを振り向いて、にやにやしながら向こうに帰っていったんで、このやろうと思って(笑)」
そんな渡邊のユーモラスな証言を聞けば、八村は復帰直後にもかかわらず、実にのびのびと楽しんでプレーしていることが伝わってくる。この様子なら、日本が産んだ最高傑作の視界は良好なのだろう。まだディフェンスとロングジャンパーの安定感に改善の余地があるが、ルーキーに課題があるのは当然のこと。心配された故障後の停滞はなさそうなだけに、これからも成長していけるはずだ。
今週末、八村には、日本人としてはもちろん史上初の出場となるオールスターのライジングスター・チャレンジ(ルーキーと2年目の選手たちの選抜戦)の舞台が待ち受けている。ここでも存在感を誇示し、歴史にまた新たな1ページを刻み込んでくれるはずだ。
「今はとにかくアピールしないと」
一方、グリズリーズとの2ウェイ契約も2年目を迎えた渡邊の2019~20シーズンは必ずしも順風満帆とはいえない。9日のウィザーズ戦を終えた時点で、NBAでの出場機会は今季9戦のみ。平均スタッツも5.4分のプレー時間で1.8得点、0.9リバウンドと、まだ最高レベルの舞台で実力を示すには至っていない。
Gリーグのメンフィス・ハッスルでは1月22日のゲームで40得点を挙げるなど、20試合で平均17.3得点、5.3リバウンドの好成績。ハッスルでの溌剌としたプレーぶりを見ると、プロの水にも慣れた余裕と落ち着きが確実に感じられる。ただ、Gリーグで活躍しても、大物ルーキーのジャ・モラントを中心とする今季のグリズリーズはプレーオフ争いに参入していることもあって、NBAで実績がない渡邊が試される場面がなかなかないのが現状。渡邊本人は否定しているが、他チームでの昇格が叶わない2ウェイ契約のシステムが障壁の1つになっている感もある。
「もう時間も限られていますし、今はとにかくアピールしないといけません。余裕がある立場ではないので、前のシクサーズ戦のように積極的に攻めていく中で正しいプレーをしっかり選択し、アピールができたらなと思います」
ウィザーズ戦時のそんな言葉が示す通り、聡明な渡邊はもちろん自分の置かれた立場、やらなければいけないことは理解している。