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好物マカロンも断ち、過酷な減量。
レスリング・樋口黎が誓う師匠越え。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byMiki Sano
posted2019/12/26 20:00
「マカロン王子」の異名を持つほどの樋口。あまりに好きすぎて大学生時代には自作に挑戦したこともあったという。
「もう、死にそうです」
予選を行なった21日は試合後の体重が57キロを1.6キロオーバー。夜はサウナで汗をかき、決勝のある22日朝も体を動かして残りを落した。
「もう、死にそうです」
その言葉通りのやせこけた顔は、同じように減量に苦しんだリオ五輪前と比べても明らかにげっそり感が増していたが、目標に向けて望みをつないだ喜びを感じている様子も明らかだった。
五輪2大会連続でメダルを。
リオ五輪の決勝で敗れた悔しさが今の樋口を支えている。師事する湯元健一コーチにも幾度となく言われてきたのが、「オリンピックの悔しさはオリンピックでしか返せない」という言葉。
湯元コーチは2008年北京五輪で男子フリースタイル60キロ級銀メダル(当時は銅メダル、後にドーピング違反者が出たために繰り上がり)に輝き、2012年ロンドン五輪では5位だった。樋口は師の顔を思い浮かべながらこう言った。
「オリンピックに連続で出ることや、2大会連続でメダルを取ることは、湯元先生でも難しいことでした。でも、それを越えていかなければいけない。僕はそう思っています」
樋口は'20年3月の五輪アジア予選(中国)で日本の出場枠を獲得すれば東京五輪切符を手にする。そこで枠取りに失敗した場合はその後の世界予選にまわるが、争いは厳しくなる。
「アジア予選で決めなければならないと考えている。一発で決めたい」
壮絶な減量でつないだ道を、必ず東京五輪の金メダルにつなげる。一回り成長した樋口は言葉に覚悟を込めた。