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10連敗からの2位、筒香嘉智の移籍。
DeNA三原代表が振り返る2019年。
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byHirofumi Kamaya
posted2019/12/22 11:30
三原一晃代表はベイスターズのドラフトやトレードなど、チーム編成の責任者だ。
筒香は覚悟を持ったキャプテン。
――その来シーズンは、ポスティングによりタンパベイ・レイズへ移籍が決まった筒香嘉智選手を欠くことになります。気になるのはポスティングを行使するまでの過程ですが、シーズン中に何か話し合いの場があったのでしょうか。
昨年の年俸更改のときに筒香からそういう希望を聞いて、「わかった、考えます」と。よきタイミングで話し合おうと伝えましたが、前提としてまず今シーズンは優勝を目指し全力で頑張ると筒香は言ってくれました。ですから正直、シーズンの終わりが見えるころまでは彼とそのことについて話すことはありませんでした。そして、しかるべきタイミングで確認をすると、その意思は変わることはないという。ならば球団としても彼の夢を叶えるために背中を押そうとコンセンサスを取り、送り出すことを決めました。
もちろんチームにとって筒香が抜けることは大打撃になることは間違いありません。しかし、そのことを誰よりもわかっているのも筒香自身なんです。自分が抜ければチームにどんな影響があるのかを理解している彼が、そこまでして自分の意思を貫きたいと考えている。「筒香が抜けてベイスターズは弱くなったね」と言われないために他の選手たちは頑張るでしょうし、またそう言われて一番胸を痛めるのも筒香だと思います。そこまでの覚悟を持った人間を引き止めるのは、我われとしては違うと思ったんです。
――この5年間、主軸としてキャプテンとしてチームを牽引してきた筒香選手を近くで見てきた三原代表は、稀代のリーダーをどのように評価していますか。
20代半ばの若者であることには間違いないのですが、キャプテンという立場の意味を毎年のように掘り下げているように見えました。有事の際に動ける準備を常にしており、タイムリーに皆をロッカールームに集め声を掛けるなど、本当に覚悟を持ったキャプテンだなと感心していました。
ときには球団にチームメイトを盛り上げるためにモチベーションビデオを作りたいと申し出るなど、自分がチームのためになにができるのかを常に考え行動していました。球団としても選手から要求があれば、できるだけのことはしてあげたい。ただ実際問題、フロントとユニフォームを着ている人間というのは、双方の理解において一枚も二枚も壁があるものなんです。筒香はそこを乗り越え真摯に訴えてくれたので、我われとしても非常にありがたい存在でした。
誰か1人で穴を埋めるのは不可能。
――筒香選手が抜けることに対して、メジャー通算33発のタイラー・オースティンを獲得するなど準備は進めていますが、戦力としてばかりではなく精神的支柱であった筒香選手の穴をどのようにして埋めていくお考えですか。
極論を言えば、筒香の穴を誰かひとりで埋めるのは不可能だと思います。ですから先ほど話したように、今季悔しい経験をした選手たちが、少しずつでも大きくなってその穴を埋めなければならない。選手たちもそういった話をしていますし、ひとり一人の力を来季は集約させていく必要があると思います。
筒香がいなくなってもなお強くなるDeNAベイスターズというものを、ぜひお見せできればと思っています。