才色健美な挑戦者たちBACK NUMBER
現役復帰した小野真由美が感じる
「ホッケーができる環境に喜びしかありません」
text by
林田順子Junko Hayashida
photograph byKiichi Matsumoto
posted2019/12/18 11:30
引退後はコーチングを学ぶ。
休みたいという心の声に従って引退をしたあとは、コーチングと英語の勉強のために、一人でオーストラリアに留学をしました。帰国後は慶應義塾大学のコーチもさせていただけて、この経験があったからこそ、今、指導者目線でチームを俯瞰して見れるようにもなっていると思います。選手が疲れているなとか、表情がいつもと違うなとか、昔とは違う目線でチームを見れるようになりましたし、指導する側の望んでいることを理解して、選手としてその想いに応えるプレーをすることができる。ホッケー以外にもいろいろな学びや新しい出会いがあって、私にとって引退していた期間は、良い時間だったなと思っています。
一度は引退した私が、アジア大会で代表入りできたのは、故障明けの選手を休ませるための交代要員だったから。20代の頃だったら、最初に選ばれていないなら行きたくないって思ったでしょうね。でも、あの時は交代要員として1番に自分を選んでくれてありがとうと素直に思えましたし、頑張る機会をもらえたと思いました。
復帰した代表では最年長。
代表では私が最年長。日常では若い人と接する機会なんてそうそうありませんから、彼女たちと過ごす時間も楽しいですね。とはいえ、年長者として周りを見る余裕もあるので、チームの状況を客観的に見ることが私の役割だと思っています。コーチからも「最近チームはどう?」と聞かれることが多く、現場の状況も伝えられるようになりましたし、コミュニケーション面での課題も与えられています。そのうえで心掛けているのはフラットでいるということ。コートに立てばみんな一緒。年齢関係なく、仲間をリスペクトする気持ちは、持ち続けています。
それに仲間が必死に頑張っている姿を見ていると、私も頑張らないとって思うんです。頑張ることは当たり前なんですけど、一緒に頑張れる仲間の存在はすごく大きい。
試合ではもう動けないほど疲れていることもあるんですけど、今ここで一歩を踏み出せば得点につながる、失点しないという状況で踏ん張るために、後悔をしないためにも、どんなトレーニングも常に全力で行かないとダメだなと思っています。
だから、日々の課題は多いですね。ありがたいことにトレーナーの方に伸び代しかないですね!って言っていただくこともあって(笑)。反面、それってできていないことが多いということでもあるので、そこを追い求めたいと思っています。そうやって続けていたら7カ月後に理想のプレーができる自分になれているかもしれない。そう思うとワクワクだけしかないんですよね。
小野 真由美Mayumi Ono
1984年8月14日、富山県生まれ。10歳でホッケーを始め、'06年アジア大会の日本代表に選出。'07年から'17年まで現在のコカ・コーラレッドスパークスに所属し、3度の日本リーグ優勝に貢献。'17年2月~7月、オーストラリアへ留学。現在はSOMPOケア株式会社広報部に所属しながら日本代表選手として活躍中。慶應義塾大学女子ホッケー部のコーチも務めている。オリンピックには'08年北京、'16年リオと2大会に出場。
新しいナビゲーターに俳優の田辺誠一さんを迎え、番組デザインもリニューアル。アスリートの「美学」を10の質問で紐解き、そこから浮かび上がる“人生のヒント”と皆さんの「あした」をつなぎます。スポーツ総合誌「Number」も企画協力。
第86回:小野真由美(ホッケー)
12月20日(金) 22:00~22:24
ホッケー女子日本代表の小野真由美選手は'08年北京、'16年リオと五輪2大会に出場した後、現役を引退し、オーストラリアへ留学。その後、現役に復帰し、34歳で再び日本代表に選出されました。10代、20代の時と今のチーム内での役割の違い、留学がもたらした気持ちの変化など、彼女の美学を10の質問で紐解きます。
第87回:マンスリースペシャル
12月27日(金) 22:00~22:24
第84回から第86回までに登場した元フィギュアスケート選手・八木沼純子さん、元サッカー選手・戸田和幸さん、ホッケー・小野真由美選手。第87回は未公開シーンを含む3人の総集編をお届けします。