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現役復帰した小野真由美が感じる
「ホッケーができる環境に喜びしかありません」

posted2019/12/18 11:30

 
現役復帰した小野真由美が感じる「ホッケーができる環境に喜びしかありません」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

text by

林田順子

林田順子Junko Hayashida

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Kiichi Matsumoto

 17歳で日本代表デビューを果たし、数々の国際大会に出場した小野真由美。2016年リオ五輪後に32歳で引退をしたが、翌年には現役に復帰。昨年行われたアジア大会ジャカルタでは金メダル獲得に貢献した。今、彼女は介護サービス会社で広報として働きながら、ホッケーができる喜びをひしひしと感じている。

 今は代表の活動が増えてきているので、毎日出社することは難しいのですが、午前中トレーニングをしたら午後に出社、午前中に出社したら午後にトレーニングをしています。会社にクラブチームがあるわけではないので、実際にスティックを握って練習できるのは、週末だけ。平日はフィジカルトレーニングが中心になります。もちろん、実戦の練習はやればやるほど良いし、絶対に伸びるので、監督からもスティックを握る機会をもっと作りなさいと言われているのですが、環境的にも時間的にも難しい状況ですね。それでも仕事もできて、トレーニングもできる環境にあるというのが、今はすごくうれしいですし、日頃ホッケーができないぶん、代表の活動でプレーできる喜びは大きいですね。

 10代の頃は先輩についていくだけで、チームのことは何も考えていませんでした。20代もいかに成長するか、と自分のことだけで必死。今はもちろん自分にもフォーカスをするんですけど、監督が何を望んでいるのか、今のチームの雰囲気は勝てる雰囲気なのかとチームの状況を自然と感じられるようになりました。

日の丸を背負う意味、幸せな疲れ。

 高校生で運よく代表入りしましたが、そこで初めて上には上がいるんだと知りました。それまでは自分が一番だと思ってやってきたのに、先輩との差に打ちのめされて、自信がなくなってしまった。チームで一番若かったので、メディアにも取り上げてもらうことが多かったのですが、実力が伴わない、期待に応えられない自分が本当に嫌いでした。初めて出場したアジア大会では本来のディフェンスではなく、フォワードで、しかも出場時間はたった3分ほど。ボールにも触っていなかったと思います。戦力というより、経験をさせておくために出場させたというのに近いと思います。

 ただ、その時の先輩たちの姿は今でも覚えています。

 今のホッケーは数分ごとに選手が交代をしていきますが、昔は交代も少なく、ハーフの35分間ほとんど出っぱなしということも多かったんです。なので、スターティングメンバーにならないと出場機会はほとんどなくて、私はいつも試合に出られない側。昔はすごく厳しい言葉も飛び交っていましたし、1試合の疲労感は相当なもので、試合が終わった後の先輩たちの姿は物凄いものでした。でも疲れたとかおっしゃらないんですよね。その姿を見ているとしんどそうだなと思う反面、幸せな疲れだな、どれだけ辛くてもいいからそこに立ちたいと思ったんです。先輩たちの姿を思い返すと、日の丸を背負う意味や、幸せな疲れを私はまだ後輩たちに見せられていないんじゃないかなと感じています。

【次ページ】 引退後はコーチングを学ぶ。

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