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クライミング最大の武器は「若さ」。
“進化途上の選手たち”から目を離すな!
posted2019/11/29 11:00
text by
津金壱郎Ichiro Tsugane
photograph by
AFLO
大輪を咲かせるための取り組みが、ひとつ目の成果をもたらした――。
インドネシア・ボゴールで開催された『アジア選手権』(11月6日~10日)のボルダリングで、大会1カ月前に急遽出場の決まった慶應大1年の小西桂が、シニアの国際大会初出場で栄冠をつかみ取った。
決勝では、この大会のリードとコンバインドの二冠に輝いた藤井快(こころ・ボルダリング2位)や、今季W杯ボルダリングで1勝をマークした緒方良行(同4位)、高校1年生ながら今季のW杯ボルダリング・ロシア大会で決勝進出を果たした川又玲瑛(れい・同3位)などと渡り合い、最終第4課題をただ一人完登して優勝を手繰り寄せた。
「決勝に残ったほかの日本選手はみんな実績があるので、挑戦者の気持ちで楽に挑めました。最終課題は快さんも玲瑛君も完登目前まで行ってて。ボクが完登できたのは、ボクのリーチがゴール取りの距離にぴったりハマっただけな気がします」
そう謙遜する小西だが、勝負所で自らの持ち味を長所として発揮できたのは、自らのクライミングスタイルが抱える弱点と正面から向き合ってきた成果だろう。
小西が長いリーチを生かし始めた。
小西の特徴のひとつがリーチの長さにある。一般的にウイングスパン(両腕を水平に広げたときの右手指先から左手指先までの長さ)は身長と同程度とされるが、身長175cmの小西のそれは185cmもある。
ほかの選手が届かない距離のホールドに容易く手が届く反面、足を上げなくても次のホールドに手が届いてしまうことでのデメリットもある。体が伸び切ってしまうため、次のムーブを起こすのが難しくなるのだ。
以前の小西はこうしたデメリットを覆せないことが多かった。だが、高校2年時に世界ユース選手権の代表切符を逃したことから、持ち味の長いリーチを最大限に生かせるようにと、体の使い方を変えたり、体幹強化に励んだりしてきた。
「意識して登り方を変えるようになってから、結果がなかなか出なかったですが、今年になって少しずつフィットしてきた感覚はあって。アジア選手権での優勝は取り組んできたことが間違ってなかったという自信になりました。今後も継続して精度を高めていきます」