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モロッコサッカーの礎、ハッサン2世。
「全体主義的サッカー」の記憶。
 

text by

クエンタン・ミュレール

クエンタン・ミュレールQueentin Muller

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photograph byL'Equipe

posted2019/11/11 11:30

モロッコサッカーの礎、ハッサン2世。「全体主義的サッカー」の記憶。<Number Web> photograph by L'Equipe

試合前の選手たちに1人ひとり握手をし、激励を送るハッサン2世(写真右)。モロッコがサッカー強国となる礎を築いた。

国王考案の戦術で優勝したランス。

 当時の対戦相手だったランスで、すでにストライカーとして活躍していたモロッコ人のハッサン・アケスビは、大会の始まる数日前にハッサン2世が、監督のアルベール・バトーと彼が率いるランスの選手たちを招待し、サッカー談義を交わしたことをよく覚えているという。

「国王は私たちランスのシャンパンサッカーのスタイルにあった、彼が考案したひとつの戦術を提示したんだ。数分間の説明の後で、すっかり興奮して感化されていたアルベール監督は『われわれはその通りにプレーすべきだ!』と言い出した。そして実際に大会で、国王の戦術を採用して、われわれは優勝した。私からするとハッサン2世は、まるで本物の監督のようによくサッカーを知っていたと思う」

 そうであるからこそ……モロッコという小国でサッカーにかけた意志もまた、ただの権力欲ではなく本物の情熱であったと言える。

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