酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
最強の来日大リーガーはクロマティ。
大外れは7戦で引退グリーンウェル。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byBUNGEISHUNJU
posted2019/11/03 19:00
現役時代の原辰徳らとともに巨人打線の主軸を担ったクロマティ。今年はチームに同行する時期もあった。
バース、ブーマーは無名だった。
MLBのスター選手で、NPBでも活躍した選手と言えば、ウォーレン・クロマティが最も有名だろう。
・ウォーレン・クロマティ
(MLBではエクスポズなど、NPBでは巨人)
MLB
1107試合3927打数1104安打
61本391打点50盗 打率.281
NPB
779試合2961打数951安打
171本558打点26盗 打率.321
クロマティはメジャーで3割を打ち、NPBでは1989年にMVPを受賞している。
働き盛りにNPBに移籍したこと自体が稀有なことだったが、クロマティは、日本野球に見事に順応した。聡明な選手だったのだろう。
ただ、NPBで大活躍した選手は、MLB時代に無名だった選手が圧倒的に多い。
三冠王を2回獲得したランディ・バースはMLBでは69安打9本塁打、こちらも三冠王経験のあるブーマー・ウェルズはMLB時代、29安打0本塁打である。
投手でも、NPBで100勝したジーン・バッキーはMLB出場なし。同じく100勝のジョー・スタンカはMLBでは1勝。今年引退したランディ・メッセンジャーはNPBで98勝したがMLBでは4勝どまりだった。
野球選手の選手生命は20年前後と短い。その期間に、日米両方で実績を挙げるのは難しいのだ。
グリーンウェル、ペニーは……。
メジャーのスター選手で、日本で全く活躍できなかった選手は、枚挙にいとまがない。
古いところでは、1974年のフランク・ハワード。ホームラン王2回、打点王1回の実績を持つ1200cmの巨漢スラッガーは、鳴り物入りで太平洋に入団。キャンプでは163cmのロッテ弘田澄男とのツーショット写真が話題になった。
漫画「あぶさん」では、景浦安武とホームランの打ち合いをしたことになっていたが、公式戦は1試合に出ただけで2打数0安打で帰国した。
阪神ファンは、1997年のマイク・グリーンウェルを思い出すだろう。
レッドソックス時代に119打点を挙げ、大いに期待された。しかしたった7試合に出ただけで「神のお告げがあった」と突如引退。年俸3億という高給取りだっただけに、ファンはぼやきまくった。
記憶に新しいところでは2012年のブラッド・ペニーである。ドジャース時代に最多勝投手になった本格派だったが、ソフトバンクでは4月に1試合登板しただけ。退団後の「楽しくなかった」という発言が、ホークスファンを怒らせた。