イチ流に触れてBACK NUMBER
イチロー、草野球デビューに向けて。
シアトルで1日300球を投げ込む。
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byKYODO
posted2019/09/24 11:45
マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクターとして、打撃投手も務めるイチローさん。
仲間意識だけではない、深い意味も。
平凡な二塁ゴロがライト前ヒットになったり、外野飛球が本塁打になる可能性もある。それでもイチローさんはどんな時でも前向きに自身を支えてきてくれた仲間たちと野球がしたいのだと言う。そこには仲間意識だけではない、深い意味もあった。
「僕はプロとしてやっていましたから、自主トレの時も真剣に、彼らも真剣に手伝ってくれるんですけど、彼らは今まですごく楽しかったと思うんですよ。けど、一緒にゲームをやろうとすると今度は(僕に)ついていかないといけないと言うプレッシャーが出てくる。彼らは彼らで今、自主トレやっていると思うし、大変だと思うんですよ。僕の野球に付き合うスタンスでなく、本当にゲームをやらなくてはならないですから」
草野球と言えど、最善のアプローチを。
これだけを聞くと、一緒にプレーすることで野球の難しさを感じて欲しいと言っているようにも感じる。だが、そんな思いでイチローさんは仲間たちと野球がしたいのではない。野球レベルに関係なく、野球の素晴らしさ、面白さを、真剣にプレーする中で感じとって欲しいのである。
「実際にゲームのスタンスで練習をしてみると、考えなきゃいけないことが野球にはいっぱいあって、外から見ている部分にはすごいスローなんだけど、ここに入ってやるとものすごいスピードでいろんなことが進んでいく。それを今、彼らは実感しているんですよ。ルールもわからないし、中にはルールブックを買って今勉強している人もいる。それぞれに今、やっているんですよね」
草野球と言えど、試合のために準備し、心技体を切磋琢磨し、結果を導き出すために脳みそを使い、最善のアプローチをはかる。それでも失敗するのが野球であり、プロの世界も同様だ。自身がプロ生活で感じてきた奥深さを仲間たちに少しでも感じて欲しい。