マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
北照高・上林弘樹監督の甲子園。
2カ月前の春の大会では塁審姿。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2019/08/18 07:30
北照高校は北海、駒大苫小牧、札幌第一などがひしめく南北海道を勝ち抜いて甲子園へやって来た。
その北照が甲子園にやって来た。
その北照高が「南北海道」を勝ち抜いて、甲子園にやって来た。
試合の前後には“行事”がいろいろあって、まとまった話をすることはできない。試合のない日に、練習するグラウンドに行こうと思った。
甲子園大会の出場チームは、主催者が割り当てた時間に指定の練習グラウンドで毎日2時間ずつ練習することになっている。
たまたま、甲子園からいちばん近いグラウンドが指定の練習グラウンドになっていた。
20対1、炎天下でのノックはきつい。
着いたときは守備練習の真っ最中だった。
昼下がりの炎天下、グラウンドの上では体があぶられる。上林監督はホームベースのかたわらでノックを打っていた。
内外野、7つのポジションに散らばった20人ほどの選手たちに、次々にノックの打球を飛ばし、同時にゲキを飛ばし、「指導」を与える。
20対1……このクソ暑いのに、20対1だ。
これはきつい。なんともきつい。
大声で指導を飛ばすたびに、頭からスーッと血の気が引いて、クラクラーッと倒れそうになる。そのたび、頭を振ってごまかしては、次のノックを打つ。
やった者でないとわからない一瞬の“失神”。
上林監督のノックが40分を超えた。
選手1人に20本としてもノック400本。体感40度前後のグラウンドの土の上で、打球の方向と飛距離にバリエーションをつけながら400回のスイング。
上林監督も40になったばかりだからまだ十分に若いが、ノックは若いコーチとか学生コーチに任せるのが、多くのチームの普通のやり方だろう。
手作りのチームを作りたいんだ。丹精込めたチーム作りがしたいんだな……そして、なにより、選手たちがかわいいんだ。