野球善哉BACK NUMBER
作新学院・捕手、配球に悔いなし。
小林誠司のように、満塁被弾を糧に。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2019/08/18 18:00
作新学院の捕手・立石翔斗(左)らが呆然とするなか、本塁に生還を果たす中京学院大中京・元謙太。8回裏に逆転満塁ホームランを放った。
あのキャッチャーの子がまだ野球を。
'07年の決勝戦で敗れた広陵の捕手・小林誠司(巨人)は、敗因の責任を投手・野村祐輔(広島)と同じくらい背負っていた。「野村に申し訳ない」と、あの満塁ホームランのシーンではない別のところの自身の失敗を悔いていたものだった。
その小林が大学に進学してしばらくの頃、こんな決意を語ったことがある。
「誰でも経験できるようなことではないことを僕は体験できたので、無駄にしないようにしたいですね。あの試合のキャッチャーの子がまだ野球を続けている、頑張っているんやなって言われるような、野球人生を歩んでいきたい」
あの悲劇の中心にいた人物はそう言ってプロまで上り詰めた。
大学に進学して野球を続けるという立石は、今後の目指すべき選手像をこう話す。
「もっと周りが見えて、投手の気持ちがわかって、投手のいいところを引き出してあげられるような捕手になりたい。ああいう試合、場面でこそ、投手のいいところを引き出せるようになりたいですね。また、バッティングの方でも投手を助けられる捕手を目指していきたい」
小林と同じ道に進むべきだというプレッシャーを与えるつもりはない。だが、立石も小林のように多くの人が経験できない体験を甲子園で得ることができた。
これを糧に、と願うばかりだ。