2回以降、杉本は立ち直った。

　チーム打率.425の打線を引っさげて甲子園に乗り込んできた八戸学院光星の仲井宗基監督は、初戦に向けた準備をこう話す。

「（誉高校の）愛知県大会の準決勝と決勝戦のビデオを見て、研究しました。（甲子園常連校の）中京大中京が誉に苦しんだのはなぜなのかと考えたら、ハマっていたんです。杉本君は低めに丁寧に投げますから、変化球を打たされる。そこに注意していました」

　2回以降、杉本は本来の力を取り戻した。

　4回に1点を失うも、5回を投げて6三振を奪った。3回表には大江、そして本塁打を打たれた大山から連続三振を奪っている。本当は最初からこれをやりたかったのだろうなと想像させる、技巧的なピッチングだった。

　9－0で試合は決着したが、八戸学院光星が避けたかったのは、杉本の投球にハマってしまうことだった。「逆に4点を先に奪われていたら、大変な試合展開になっていたと思います。1回はよくチャンスメークして下山が打ってくれた」という指揮官の言葉にも、見た目の数字ほどの楽勝ではなかったことが表れている。

甲子園の魔力は令和でも健在。

　これが甲子園の開幕戦というものなのか。

　誉を率いる矢幡真也監督は悔しさを噛みしめた。

「開幕直後だからなのか、初出場だからなのかは分かりませんが、普段の杉本ではなかったかなと思います。周りもちょっと硬くて、自信に満ち溢れたプレーではなかったですね。監督の経験不足を感じます。全てにおいて、甲子園で勝つためにやらないといけないことは多いなと感じました」

　愛知の常連校を封じ込めてきた生命線のインコースが、この日は逆側に作用した。独特の緊張感がある甲子園。やはり、令和の開幕戦もまた、甲子園の怖さを感じさせる一戦だった。