プロレス写真記者の眼BACK NUMBER
飯伏幸太も浮上で混沌のG1戦線……。
内藤哲也に残されたわずかな可能性。
posted2019/08/06 11:40
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
新日本プロレスのG1クライマックスは8月3日、4日の大阪府立体育会館(エディオンアリーナ大阪)での2連戦が終わった。AとBの両ブロックともそれぞれ9戦中7試合を消化したが、優勝の行方は混とんとしてきた。
ジョン・モクスリーが独走していたBブロックは、モクスリーが矢野通とジェイ・ホワイトのワナにはまって、まさかの2連敗。モクスリーの首位は以前変わらないが、それを1勝差で内藤哲也、ホワイト、石井智宏、後藤洋央紀の4人が追う展開になった。
4日、鷹木信悟との「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」内での対決を制して優勝戦線にどうにか踏みとどまった内藤は言った。
「わずかでも可能性がある限り優勝を目指す」
鷹木との戦いは2人にとって特別な意味がある試合だった。
「鷹木と初めて出会ってから19年、最後に向き合ったのは20歳くらいの時かな。だから、16〜17年前のことなんだけれども、今日、久々に向き合ってみて、アニマル浜口ジムで切磋琢磨していた時代がフラッシュバックしてきたね。すごく懐かしかった。
ほとんどオレは鷹木に勝ったことなかったから、オレにとって彼は嫉妬の対象でしかなかった。こうしてプロのリングで戦い、そして彼に勝てたことで、ずっと今まで心に溜め込んでいたものが発散されたかな」
内藤はプロレスラーを目指してアニマル浜口ジムに通っていた若き日々を思い浮かべていた。何度やったかわからないスパーリングで鷹木に勝てなかった悔しさも同時に思い出していた。
「オレは史上初の偉業を目指してる」
しかし、ノスタルジーに浸っている場合ではないことを、内藤はよくわかっていた。
「このG1クライマックス、別に鷹木に勝ちたくて出たわけじゃないからね。リング上でも言った通り、オレは(IWGPインターコンチネンタル王座とIWGPヘビー級王座の2本のベルトを同時に巻く)史上初の偉業を目指してやっている訳だしね。そこにオレはたどり着いてみせますよ。
まあ、状況は厳しいけどね。この鷹木からの勝利を無駄にしたくないし、するわけにもいかない。彼からの勝利がものすごく価値のあることだってオレは知っているから。これを無駄にしないためにも、あと2試合、全力で戦いますよ、そして優勝を目指します」
内藤は他力本願という変わらない現状を踏まえたうえで「優勝」という言葉を口にした。
では「想像することは楽しい」と、内藤が普段から言っている内藤流の想像を勝手に膨らませてみよう。