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全英OP初優勝は「シュールな経験」?
シェーン・ローリーのゴルフと家族。 

text by

舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

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photograph byGetty Images

posted2019/07/22 17:00

全英OP初優勝は「シュールな経験」?シェーン・ローリーのゴルフと家族。<Number Web> photograph by Getty Images

シェーン・ローリーの海外メジャー制覇はもちろん初。こんな風貌だが、まだ32歳のここから全盛期を迎えるゴルファーである。

子供のころからの夢だった全英オープン。

 人生のプライオリティに変化が起こり始めたきっかけは、2016年全米オープンで勝利を掴みかけて逃した苦い経験だった。2位に4打差の単独首位で最終日に臨んだローリーは、しかし76と崩れてダスティン・ジョンソンに惜敗し、2位に終わった。

 その年、愛妻ウェンディと結婚。翌年には長女アイリスが生まれた。

「僕のプライオリティは家族だ」

 ゴルフより家族――もちろん、それは心の底から湧き出した真の想いであり、今でも彼にとって最優先は愛妻と愛娘である。

 だが、プロゴルファーであり続ける限り、お腹の底からはアスリートとしての戦意や勝利への渇望が湧き上がってくる。

 全英オープン優勝は子供のころからの夢だった。だが、挑んでも挑んでも優勝どころか予選すら通らず、4年連続予選落ちとなった昨年大会では「僕はカーヌスティのカー・パーク(駐車場)に座り込んで泣いた」。

 父親として夫として大切にしたいもの。プロゴルファーとして手に入れたいもの。ローリーは、その狭間で苦しむ日々に陥った。

コーチ、キャディ、家族に支えられて。

「ゴルフは僕の友達ではなかった」と、ローリーは苦しい日々を振り返った。だが、それでも戦わなければいけない。恐れてはいけない。逃げてはいけない。

「ビターな結末に立ち向かわなければいけない」

 そんなローリーの救いになったものは、ゴルフの練習や技量や成績ではなく、周囲の人々の温かいサポートだった。

 このロイヤル・ポートラッシュでも、まさにそうだった。自信がないまま現地入りしたローリーを街中のカフェに連れ出し、徹底トークで彼の自信を引き出したのは、コーチのニール・マンチップだった。

 最終日。相棒キャディのブライアン・“ボー”・マーティンは、ローリーがミスショットするたび、ボギーを喫するたびに、必ず積極的に語りかけ、ボスの気持ちを切り替えさせていた。逆に終盤は2位との差を5打、6打と広げるたびに語りかけ、ボスの気持ちが先走らないように心がけていた。

 そして、愛する妻と娘は「たとえ僕がいくつで回ろうとも、トロフィーを抱こうとも、肩を落とそうとも、変わらず僕を待っていてくれる」。そう思えることが、ローリーの心の支えになっていた。

【次ページ】 「とてもシュールな経験だった」

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