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全英OP初優勝は「シュールな経験」?
シェーン・ローリーのゴルフと家族。
posted2019/07/22 17:00
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
Getty Images
72ホール目。ロイヤル・ポートラッシュの大観衆のすべての視線の中で、堂々と闊歩するシェーン・ローリーの姿に、しばし見惚れた。18番グリーン奥のグランドスタンドに向かって手を振り、笑顔を投げかけるローリーの姿は、まさしくヒーローだった。
68年ぶりに北アイルランドに戻ってきた今年の全英オープンで、見事な勝利を収めたのは、アイルランド出身の32歳、ローリーだった。
表彰式で掲げたクラレットジャグは、ローリーが文字通り「母なる大地」で掲げた優勝トロフィー。
「これはアイリッシュのゴルフにとって大きな意義がある。アイリッシュのスポーツにとって大きな意義がある。だから、このトロフィーはみんなのものだ」
元々話好きのローリーだが、大勢の人々の前で、彼がこんなにも素敵で粋な優勝スピーチを披露する日が到来したことが、とても嬉しく感じられた。
12歳でゴルフを始め、小技の名手に。
ローリーが生まれ育った故郷は、ロイヤル・ポートラッシュから車で4時間ほど南下したアイルランドのクララという小さな町だ。
「子供のころは、地元のゴルフ場で友達とピッチ&パットを競いながら夏休みを過ごした。ゴルフを始めたのは12歳のころだった。僕の家はスポーツ一家だったけどゴルフ一家ではなく、僕は自己流でゴルフを覚えていった」
近所の仲間たちとの小技競争は、子供としては真剣勝負だったとローリーは言う。それがショートゲームの感性を磨いてくれた。それが、彼が今「小技の名手」と呼ばれる所以である。
めきめき腕を上げたローリーは、2009年にアマチュアにして欧州ツアーのアイリッシュ・オープンを制覇。すぐさまプロ転向する道を選んだ。2012年に欧州ツアー2勝目、2015年には世界選手権のブリヂストン招待を制し、米ツアー初優勝。
そのころまでは、ローリーにとって、ゴルフこそが、すべてだった。