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大谷翔平、亡き先輩左腕への誓い。
「墓前にチャンピオンリングを」
posted2019/07/11 17:00
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph by
AFLO
誰もが言葉を失った。
エンゼルスの先発左腕タイラー・スカッグス投手が7月1日、遠征先のダラス郊外のホテルで急死した。27歳の若さだった。
地元警察の発表によると、午後2時18分、遠征先のホテルの部屋で発見。すでに意識がなく、その場で死亡が確認された。死因などの詳細は明かされておらず、事件性はないとみられる一方で、シーズン終了時まで捜査は継続されることになった。
突然の悲報を受け、当日の試合は、即刻中止が決まった。
その直前まで、エンゼルスは投手陣のリーダーを中心に、笑顔に満ちていた。アーリントン、ヒューストンと続くテキサス遠征を前に、スカッグスはブラッド・オースマス監督に、ユーモアたっぷりに提案した。
「テキサスへ行くのだから、カウボーイスタイルにするのはどうだろう」
シャレの利いたアイディアに首脳陣も賛成。大谷翔平をはじめ全員がカウボーイハット、ブーツなどを身に付け、和やかな雰囲気のまま、チャーター機に乗り込んだ。
その翌日、チームから笑顔は消えた。
代打で安打を放った大谷だったが。
悲しみを胸に、翌2日には試合が再開された。心身ともに打ちひしがれ、本来のプレーができる状態には程遠かったが、オースマス監督は涙ながらに言った。
「タイラーも試合再開を望んでいるはず。我々はプロのアスリートだが、ひとりの人間でもある。プレーするのはとてもタフなことだ」
試合前には両軍全員が黙とうを捧げ、マウンド後方にはスカッグスの背番号「45」が刻まれた。ダッグアウトにはユニホームが掲げられ、イニング間のアトラクションも自粛される中、プレーボールがコールされた。
試合は、中盤の集中打でレンジャーズに逆転勝ち。スタメンから外れていた大谷も代打で右前打を放った。勝利の瞬間には、全員が監督、首脳陣らと抱き合った。それでも、笑顔はなかった。