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伝統のル・マンでTOYOTAが、
2年連続1-2フィニッシュ。 

text by

大串信

大串信Makoto Ogushi

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photograph byTOYOTA

posted2019/06/19 11:42

伝統のル・マンでTOYOTAが、2年連続1-2フィニッシュ。<Number Web> photograph by TOYOTA

総合優勝した8号車の中嶋(右)/ブエミ(右から2人目)/アロンソ(右から3人目)。左端は村田チーム代表。

「速さ」と「強さ」は別である!?

 モーターレーシングの世界では「速さ」と「強さ」は別だと言われる。瞬間の「速さ」はもちろん必要だが、いくら速く走っても、速さを保ってレースを走りきるための「強さ」がなければ勝者にはなれない。24時間におよぶレースともなれば、その割合はもっと高くなる。

 TOYOTAのドライバー陣は、元F1ドライバーをはじめとした錚々たる顔ぶれで、才能や経験に基づく速さや、体力、集中力に基づく強さは申し分ない。これに加えて村田チーム代表が追求したのはチームとしての強さだった。

 今年のWEC世界選手権で、TOYOTAは他のライバルチームに対して重量や燃料の使用量について、当初は村田が不安になるほど重いハンディを課せられていた。その不安を払拭するため、規則で技術的な改良の範囲が限定される中、チームはあらゆる方向から現状を見直し、マシンとチームを仕上げていった。トラブルを小さくとどめるためのフェイルセーフを徹底して行い、コース上でトラブルが起きた場合に確実にピットまで戻すためのゲットホーム作戦を何度もテストした。

市販車へのフィードバックを目指す。

「自分はチームの代表ですが、『うちは本当に強くなったな』と思います」と村田は言う。

「どんな状況になっても、それに対処できたチームだけがル・マンに勝てます。何かを目指すとか何かに勝つ、とか言っている間は優勝できないんです。これまでぼくは何回も痛い思いにあってきたのでそう思っています」

 コンペティターとではなく、自分自身を見つめ自分自身と闘い、自分自身を徹底的に鍛え上げた者だけが、ル・マンの女神に微笑んでもらえるということだ。

 24時間の長いレースのほとんどを2台のTS050 HYBRIDは同一周回でトップ争いを続け完勝した。しかし、TOYOTA GAZOO Racingのゴールはそこではない、と村田は言う。

「ハイブリッドシステムを見てもわかるように、我々は市販車に展開できる技術にこだわってきました。TS050に詰まった技術は、近い将来、市販車の形でみなさんに公表できるようになると思います。レースで学んだことを市販車に活かす、それを繰り返すことが『いいクルマ』をつくることにつながるんです」

【次ページ】 開発中の「GRスーパースポーツ(仮称)」への期待。

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