球道雑記BACK NUMBER
遅れてきたロッテの切り札。
高濱卓也“ひと振り”にかける1年。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byKyodo News
posted2019/05/16 11:30
FAの人的補償として千葉ロッテに加入した高濱卓也。横浜高校では1年時からレギュラー、2年春にはセンバツ優勝も経験した。
三拍子揃ったドラ1遊撃手。
'07年の高校生ドラフト1位で阪神に入団すると、走攻守三拍子揃った遊撃手と様々なメディアで称された。そうした報道に高濱自身もけっして悪い気はしなかったが、当時はその期待に応えようと、あれもこれもと一生懸命になり過ぎて空回りをした面もあった。
「プロ1年目の頃から自分では足もそこまで速いとは感じていなかったし、どちらかというとバッティングが売りの選手って考えでした。阪神に入ってからも膝を怪我して、そこからさらに足も遅くなって、そのときのタイムが50mで6秒2とか3だったと思うんですけど守備についても高校に入学したときがピッチャーだったので、自信を持ってやっていたかと問われたらそういうわけではなかった。
それが歳をとるにつれて必然とバッティングを武器にする選手として周りから評価されるようになって、ようやく自分が思っているイメージと周りの評価がマッチしてきたのかなって感じています」
盲腸で緊急入院、それでも……。
自分の中では1度は死んだ身である。開き直った男の決意は生半可なものではない。
実は昨年の秋季キャンプ中に、高濱は盲腸を患って緊急入院。検査の結果、腹膜炎まで進行しておりそのオフには手術も行った。腹部には生々しい手術痕が残る。それでも体が壊れてもいいという覚悟でこの春はバットを振り込んだ。
「秋季キャンプで動けていない分、やらなきゃいけないというのもありましたし、キャンプまでに体のキレを取り戻さなきゃいけないというのもありました。だから自主トレではバッティングを中心にしたんです。その前のリハビリでランニングもしっかりやってきましたし、言ってみれば普段自主トレでしてくるメニューをそこでやってきた。
手術で休みがあった分、年末は休みなしという状態だったので、自主トレも今までだったら守備とバッティングを半々でやってきたものをバッティングが8、守備が2くらいの割合で極端にやってきました」