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パトリック・チャンが回想する、
ユヅル、ダイスケ、ソチ五輪。 

text by

田村明子

田村明子Akiko Tamura

PROFILE

photograph byKaoru Watanabe/JMPA

posted2019/04/26 18:00

パトリック・チャンが回想する、ユヅル、ダイスケ、ソチ五輪。<Number Web> photograph by Kaoru Watanabe/JMPA

'11~'13年の世界選手権を3連覇していたチャン。ソチ後の'14-'15シーズンを休養したのち平昌五輪を目指し復帰した。

「ダイスケはどうしてる?」

「実はモチベーションが上がらなくて、平昌オリンピックも最後まで出ようか出まいか、迷ったんだ」と、告白したパトリック。

 実際、2017年GPシリーズのスケートカナダで4位に終わった後、パトリックが練習に来ていないという情報が駆け巡ったことがあった。このままやめるのではないかという憶測も流れた中、彼はバンクーバーにトレーニングの拠点を移し、心機一転して10度目のカナダ選手権タイトルを手にしたのだ。

 このとき、バンクーバーにいたエリザベス・プットナムがおそらく彼の心のサポートをしたのに違いない。

「1つ、ぼくから聞きたいことがあるのだけれど、いい?」

 電話インタビューの最後に、パトリックがそう切り出した。

「ダイスケはどうしてる? 元気で活動しているのかな?」

 取材の最中も、パトリックの口から幾度も高橋大輔の名前が出ていた。自分が当時ライバルとして意識をしていたのはユヅルではなくてダイスケだった、と何度も繰り返した。羽生と言葉を交わした機会はほとんどなかったけれど、高橋大輔とは試合終了後に楽屋でふざけあった思い出がたくさんあったという。

 パトリック自身がもっとも競技者として輝いていた時代に、いつも表彰台の横にいたのが高橋大輔だった。彼にとって戦友といえる存在なのだろう。

「ぼくからよろしくと伝えてね」

 2018年全日本選手権で素晴らしいSPを滑り、フリーでは失敗も出たけれど総合2位だったこと。でも自ら世界と戦う準備ができていない、と言って2019年埼玉世界選手権出場は辞退したことなどを伝えた。

「でも次のシーズンも続ける、と発表しました。来季はぜひ国際大会にも出て欲しいのだけれど」と私が言うと、パトリックはこう応えた。

「彼はいつでも素晴らしい表現力があったから、ノーミスで滑ったらまだ高い評価を受けられると思う。だってジェイソン(ブラウン)だってあそこまで点が出ているし。話す機会があったら、ぼくからよろしくと伝えてね」

 パトリックはそう言葉を結び、再会を約束しあって電話取材を終えた。

Number977号掲載のパトリック・チャンの独占インタビューでは、ソチ五輪当時と羽生結弦との思い出をたっぷりと語ってくれました。ソチでの銀メダルという結果を経て、続く平昌五輪、連覇を果たした羽生にチャンが何を思ったのか――。ぜひ誌面をご覧ください。
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