野球のぼせもんBACK NUMBER
中村晃の明るい表情にほっとする。
完璧な本塁打に笑って「まあまあ」。
posted2019/04/29 11:45
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
Kotaro Tajiri
中村晃がグラウンドに戻ってきた。
4月27日にタマホームスタジアム筑後で行われたホークス三軍対徳島インディゴソックスに「2番DH」で先発。復帰戦は2打数1安打だった。翌28日の同カードは「1番左翼」で守備にも就き、第1打席で二塁内野安打を放った。
そして3回の第2打席だ。たとえブランクがあろうとも、球界きっての打撃職人が3ボール1ストライクからの甘い一球を見逃すはずがなかった。
三軍戦では耳にすることのない桁外れな木製バットの衝突音が轟いた。速度も角度も完璧な打球が飛んでいく。右翼フェンスの向こう側にある防球ネットを力強く揺らした。会心の2ランホームランだ。中村晃はいつものように平然と、そして少し足早にベースを一周した。
筆者は、ホークスベンチ横の一塁側カメラマン席からデジカメ越しに見ていた。必死に中村晃の姿を追う。ハッキリと確認できた。ベンチに戻ってきた中村晃がチームメイトの祝福を受けて嬉しそうにしていた表情を――。
その笑顔を見られたのが嬉しかったし、ちょっとだけ安心した。
本塁打は「まあまま」で「完璧」。
1月の自主トレ、2月のキャンプ、3月のオープン戦序盤と見た目には順調に過ごしていたが、変調が明らかになったのは3月9日のことだった。右脇腹の違和感を訴えてオープン戦を欠場した。その後の検査で同箇所の筋挫傷と診断されて戦列を離れたが、リハビリ組にも合流することなく自宅療養が続いていた。
そして、今季開幕が迫っていた3月23日、本人の希望により球団を通じて公表されたのは「自律神経失調症」を患っているという事実だった。
「まだ2打席ずつ。2試合で計6イニングしか出ていないですからね。でも、初めて守ることも出来たし、体の状態は問題ないです。昨日(初戦)より今日(2戦目)の方が問題なく出来ました」
本塁打については「まあまあ」と振り返りつつも、「普通に一軍と同じようなやり方で試合前から練習もしていましたし、リズムも同じつもりで臨んでいました。完璧でした。若い選手も多いし、変なバッティングは出来ない。結構みんな聞いてくる」と軽く含み笑いというか、照れたような感じで話した。