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あまりに偉大な2004年のイチロー。
262安打の足跡を今一度振り返る。 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byNaoya Sanuki

posted2019/04/14 11:30

あまりに偉大な2004年のイチロー。262安打の足跡を今一度振り返る。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

シーズン262安打を放った2004年のイチロー。「マルチヒット」という言葉が日本に定着したのも、彼がいたからこそだ。

アテネ五輪の最中も打ちまくる。

 8月半ば、日本プロ野球選手会が「スト権行使」に言及。不穏な空気が流れる中、海の向こうのイチローは11日にはメジャー4年間の通算安打が841本に達し、ポール・ウェイナーが持っていた「デビューから4年の通算安打数」で1位になる。

 8月13日には、アテネオリンピックが始まった。日本勢では柔道の野村忠宏、谷亮子らが金。女子マラソンの野口みずきも金。松坂大輔、福留孝介、黒田博樹らが参加した野球は準決勝でオーストラリアに0-1と惜敗し、銅メダルに終わった。優勝はキューバだった。

 日本が五輪で湧く中でも、イチローの勢いはとどまらなかった。17日のロイヤルズ戦では4打数4安打。地元シアトルの新聞は打撃コーチのポール・モリターがイチローに「(低迷するチームのことは考えずに)自分のことだけ考えろ」とアドバイスしたと伝えた。

 しかし翌日の同じカードでは2打席目に後頭部に死球を受けて退場。このニュースには「どきっ」とした。それでも20日のタイガース戦に復帰して3安打。「ビールを4本飲んだ感じ。頭がふらふらした」とコメントした一方で、こうも話していた。

「今年一番つらい状態で3本打てたのは大きいです」

敵地ファンから受けた大喝采。

 26日のロイヤルズ戦で史上初の4年連続200安打を達成。200本目は9回に打った中越え本塁打。打たれたロイヤルズのジェレミー・アフェルトに「彼のサイン入りバットが欲しい」と言わしめた。

 7月のインタビューで「50安打なんてもう2度と出ないかもしれない」といったイチローだったが、8月に打ったヒットは計56本。これについて問われると「ごめんなさいというしかないです」と笑顔を浮かべたという。当然のように8月の月間MVPに選ばれ、7、8月の通算打率は239打数107安打、打率.448という数字を残した。

 シーズン最多安打記録をめぐる狂騒曲が本格化したのは9月に入ってからだ。新聞各紙は、シスラーの安打記録まで「あと何本」とカウントダウンを始めた。

 その矢先の9月4日のホワイトソックス戦、イチローは3度目の5打数5安打をマークした。エースのマーク・バーリーは4安打を打たれると、マウンドで脱帽。捕手ベン・デービスは「もう投げる球がない」と嘆いてみせた。そして5安打目の後には、敵地シカゴのファンからスタンディングオベーションを受けたのだ。

【次ページ】 敬遠、極端な前進守備が増える。

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