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日本シリーズ“幻”の完全試合。
「ストッパー岩瀬の13球」を追う。
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph byKyodo News
posted2019/04/12 11:30
2007年日本シリーズ第5戦。8回まで完全試合を続けた中日の先発・山井に代わり、9回から岩瀬がマウンドへ。史上初の“継投による完全試合”が達成された。
あの「13球」を忘れてはいけない。
東海テレビが制作したドキュメンタリー番組「岩瀬の13球」は、岩瀬の引退試合が行われた今年3月2日に放映され、4月14日に再放送されることが決まっている。
すべてが終わった後で、山本は言った。
「あのチームを知っていた人、岩瀬というピッチャーを知っていた人は、みんな我々と同じ気持ちだったのかもしれないな……」
多くの人たちの声を聞いてみて、ようやく、あのギャップの正体が何だったのか、わかったような気がした。
野球とベースボールの境がどんどん見えなくなり、ゲームそのものが変容していく中でもずっと変わらないもの。1つのマウンド、1つの打席を人と人がつないでいくために最も大切なものが何かということを、あの日の岩瀬は選手生命をかけて表現していた。
あの「13球」を、時代とともに忘れ去ってはいけない。取材を通じて、そう思わされた。
Number976号では、議論を呼んだ2007年日本シリーズ第5戦の継投について、当時の選手、関係者の証言をもとに構成したノンフィクション「ストッパー岩瀬仁紀――生涯最高のマウンド」を掲載しています。落合監督はなぜ交代を決断したのか。山井投手はなぜマウンドを降りたのか。そして、あの試合は誰のものだったのか。その真相を、ぜひご覧ください。