プロレス写真記者の眼BACK NUMBER

野村直矢のエルボーに「三沢」を見た。
吹っ切れた25歳に抱く、全日の未来。 

text by

原悦生

原悦生Essei Hara

PROFILE

photograph byEssei Hara

posted2019/04/05 17:00

野村直矢のエルボーに「三沢」を見た。吹っ切れた25歳に抱く、全日の未来。<Number Web> photograph by Essei Hara

3月19日、宮原健斗に三冠ヘビー級王座をかけて挑んだ野村直矢。敗れるも、エルボーを繰り出すなど可能性を感じさせた。

なにかが足りなかった、野村。

 野村は'14年3月、金沢でデビュー。だが、ケガでの欠場もあって、'15年1月まで1勝もできなかった。

 いい選手ではあったが、なにかが足りなかった。

 ジェイク・リーと組んで世界タッグ、青柳優馬と組んでアジアタッグを獲得したが、運がないのかパートナーのケガで返上を余儀なくされたこともあった。これは神様のいたずらなのかもしれないが、野村が上がっていこうとすると、なぜか予期しないものがそれを阻んできた。

最年少三冠王ならずも、期待を抱かせる戦い。

 2度目のアジアタッグ王座返上は、自らの選択だった。

「三冠」という上を目指すための返上だった。野村の中で、もやもやしていたような気持が吹っ切れたのだろうか。

 まわりからはライバルと呼ばれているが、野村にしてみればリー(30歳)は年上であるが、一度、全日本プロレスを離れている。再デビュー戦の相手も務めた。後輩の青柳(23歳)にも負けられないものがあるし、譲れないものもある。

「宮原から怖さを感じたことがない」

「挑戦者のマンネリ化の打破」

「全日本プロレスで一番勢いがある」

 そんな理由を掲げて宮原に挑んだ。戴冠はならなかったが、野村の評価は今、ウナギのぼりだ。

 チャンピオン・カーニバル、野村の初参戦は'16年だが1勝5敗に終わった。'17年は2勝4敗。'18年は2勝5敗。

 野村にはプロレスに対する美学がある。逃げない。相手の技に真正面から全身で向き合う。そして勝つ。だが、その美学ゆえに勝利から遠ざかって来た、という見方もできる。プロレスは奥が深い。キャリア5年になる野村だが、それ以前の野村が語るほどプロレスは甘いものではない。

【次ページ】 “4回目”は開幕戦勝利。

BACK 1 2 3 NEXT
#全日本プロレス
#野村直矢
#三沢光晴
#宮原健斗
#和田京平

プロレスの前後の記事

ページトップ