錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER

錦織圭が無冠の天才から脱するため、
好相性のマイアミで見たい執念。 

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山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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posted2019/03/22 15:00

錦織圭が無冠の天才から脱するため、好相性のマイアミで見たい執念。<Number Web> photograph by Getty Images

チャンコーチと笑顔でトレーニングする錦織圭。悲願のマスターズ制覇への執念を見せてほしい。

錦織の準優勝4回という数字。

 現在のトップ10の中で錦織以外にマスターズのタイトルを持っていないのはケビン・アンダーソン、ステファノス・チチパスだけだ。しかし「獲れそうで獲れない」という印象において、現在32歳で晩成型のアンダーソンと錦織では比較にならない。

 錦織のマスターズの準優勝は計4回。優勝経験のない選手の準優勝回数としては現役で最多である。ソックがトップ10の誰とも対戦せずパリのビッグタイトルをさらったような幸運は、錦織のもとに一度も舞い込んでこなかった。

 初めて決勝に進出した2014年のマドリッドでナダルを相手に勝利目前から逆転され、最終的に途中棄権に終わったことは今なお悔やまれるが、運はその取りこぼしを責め続けるかのように、錦織にはあと一歩のところでいつも高い壁を用意する。

 2016年のマイアミではジョコビッチ、同年のトロントでもジョコビッチ、そして昨年のモンテカルロではまたもナダルと、初優勝への道はいつもこの2人に阻まれた。

 天敵ジョコビッチが右肘の故障で不在だった2017年後半、不運な偶然で錦織もまた右手首のケガでツアーを離れてしまった。ジョコビッチが復帰後しばらく苦しんだ時期は、錦織もやはり同じプロセスを歩んでいた。そうこうする間にジョコビッチは完全復活し、若手も伸び、中堅も自信をつけ、トーナメントの早い段階からまったく油断のならないツアー模様となった。

「第2の故郷」マイアミは好相性。

 以前よりもその道は険しくも思えるが、錦織が〈無冠の天才〉から抜け出す日が今週こそ訪れるに違いないといつも期待する。マイアミのように相性のいい大会ではことさらだ。

 今年は新会場が舞台となるため相性にも多少変化が生じるかもしれないが、マイアミは前述のように一度準優勝したほか、2014年にはベスト4に進出し、何より本拠地と同じフロリダにあって本人が「第2の故郷」と呼ぶほど居心地のいい大会だ。

 ブリスベンでの優勝で好スタートを切った錦織は〈19人〉の中に名を連ねるが、全豪オープンの準々決勝を途中棄権して以降、流れは良くない。特にここ2大会、ドバイとインディアンウェルズでは連続して同じ相手、22歳のホベルト・ホルカシュに敗れて3回戦までに姿を消している。

【次ページ】 相変わらず楽なドローではない。

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