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早くも2019年のベストバウト候補。
田中恒成と田口良一がついに決戦。
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byKyodo News
posted2019/03/15 10:30
王者である田中恒成(左)に田口良一が挑む形だが、2人の関係性はそこまで単純なものではない。
井上と田口の試合に感銘を受けて。
今回の対戦が、田中のたっての希望で実現したことは強調しておきたい。そしてそれは、決して「自分のけがで迷惑をかけた」という理由ではないと、田中は強調している。
「自分がプロデビュー前、高校3年生のとき、井上尚弥さんが日本チャンピオンだった田口さんに挑戦した試合を見ました。尚弥さんが判定で勝ったんですけど、田口さんが本当に強かった」
のちに井上が「あの試合で成長できた」と振り返る一戦は、井上の強さ以上に、田口の勝利にかけるすさまじい執念が見る者の心を打つ試合だった。
昨年5月、ライト・フライ級王座から陥落した田口は一度は引退を考えたものの、秋になって現役続行を表明。当初はベルトを奪われたヘッキー・ブドラー(南アフリカ)へのリベンジを考えていた。しかし、田中戦の話が浮上すると「田中くんとやれるなら」と階級アップを決意。こうして“運命の一戦”は実現したのである。
田中優位の予想が多いが……。
現時点での予想は、田中が有利という声が多いように感じる。ボクシング・ビート誌が試合1週間前に実施したツイッターによる読者投票では、2016票のうち田中の勝利を支持する人が69%、田口が31%という結果が出た。
田中は上り調子の若きチャンピオンであり、最新の木村戦を珠玉のパフォーマンスで乗り越えている。一方の田口は直近の試合でエンジンがかからぬまま、いいところなく王座陥落。下り坂のイメージがつきまとうことも、アンケート結果に影響したに違いない。
田中優勢という見立ては大筋で正しいかもしれない。ただし、ここ数日の田口を見ていると、「本当にそうか?」という疑問も湧いてくる。
ライト・フライ級時代は減量が限界に達し、「空腹とのどの渇きで1日2、3時間くらいしか寝られない状態だった」というが、階級を上げたいまは「全然違う。フライ級に上げて本当に正解だったと思っている」。コンディションが段違いにいいのだ。