スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
「クソみたいなシーズン」が終幕。
凋落マドリーはジダンに夢を託す。
posted2019/03/15 07:00
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph by
Uniphoto Press
「実質的に今季が終わったことは明らかだ。クソみたいなシーズンだってことは分かっている」
4000人のアウェーファンと喜びを分かち合うアヤックスの面々を尻目に、フラッシュインタビューに応じたカルバハルは、そう言い捨ててロッカールームへと去って行った。
ホームでの3連敗で立て続けに3つのタイトルを失う――。悪夢のような1週間により、レアル・マドリーの今季は実質的に終わった。
まずは2月27日。ホームにバルサを迎えた国王杯準決勝セカンドレグを0-3で落とし、2試合合計1-4で決勝進出を逃した。
3日後の3月2日にはラ・リーガのホームゲームで再びバルサに0-1の完封負け。これでライバルとの勝ち点差は12ポイントまで広がり、残り12試合での逆転優勝は極めて困難になった。
そして3月5日のチャンピオンズリーグでは、伏兵アヤックスに1-4の大敗。
3失点目を喫した後、サンティアゴ・ベルナベウのスタンドからは会長の辞任を訴える「フロレンティーノ、ディミシオン!(辞めろ)」の大コールが何度も沸き起こり、85分を過ぎる頃には約半数の地元ファンが席を立っていた。
これまでの主力の転落ぶり。
今季の主要タイトル無冠を決定づけたこの3連敗は、過去5シーズンで4度の欧州制覇を成し遂げた黄金期の終幕を強く印象づけた。
象徴的なのはチームの主軸を担ってきた選手たちの転落ぶりだ。
マルセロはレギロンに左SBの定位置を奪われ、この3連戦で1分の出番もなかった。長らく中盤を支えてきたクロースはらしくないボールロストを繰り返し、カゼミーロはパスミスを犯すたびに地元ファンから指笛を浴びせられた。
ベイルやベンゼマら攻撃陣も揃って不発。この3試合で本来のプレーレベルを保つことができていた主力選手はモドリッチくらいで、多くの選手から完敗を認めるコメントが相次いだ。