「プロレスはやられてからがスタート」

　若い清宮はどうしても押されがちだ。ただ、それも含めて見てもらえばいいと腹をくくってもいる。

「プロレスはやられてからがスタートというか。相手の技を受けて、叩きのめされて、それでも立ち上がるのがプロレスならではの魅力だと思います。それは、今の自分の状況と同じでもある。

　僕は現状として“強いチャンピオン”ではないんです。強い選手は他にいて、その人たちにやられてやられて、なんとかドロップキックで挽回する。それでもまたやられて、そこから立ち上がる。それが僕の持ち味になっていると思うし、お客さんに見てほしい部分です」

ノア新時代は「みんなと一緒に」

　やられても立ち上がる。そのために欠かせないのがファンの声だと清宮は言う。
　
「ベルトを獲る前は、自分のためにプロレスをしていました。でもチャンピオンになってみると“一人で闘ってるんじゃないな”と思うようになって。声援にしても紙テープにしても“こんなに応援してくれてる人がいるんだ”と心に沁みる瞬間が何度もあったんです」

　だから清宮は、ノアの新時代を「みんなと一緒に作りたい」と考えている。

　団体の新体制移行に関して、専門誌の表紙を飾った「脱三沢」という言葉に衝撃を受けたファンもいた。旧マットで使用されてきた緑色は、三沢光晴のイメージカラーでもある。ノアの未来を不安視するファンに向けて、丸藤は言った。

「ロゴが変わってもマットの色が変わっても、俺がいる場所がノア」

　一方、三沢に憧れ、三沢なき後のノアに入門した清宮は率直な心境を口にした。

「新しいことなので、やってみないと分からない。きっと誰にも分からないんだと思います。それは選手としての僕も同じで、やっぱりどうなるか分からない。

　ただ、ノアには伝統がありますから。その一つが全日本プロレス時代から伝わる技術。受身、腕の取り方一つでも本当に細かいんです。それは守っていきたい。

　もう一つ、変わらないのはファンの方との距離ですね。新しいノアは僕が作るというより、みんなと一緒に作っていきたい」

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