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「愚直な男」から「勝負師」へ、稀勢の里は生まれ変わるか。~貴乃花親方の直接指導は「師匠不在」を補いうるか~
text by
佐藤祥子Shoko Sato
photograph byKYODO
posted2016/05/07 17:00
5月場所で綱取りに挑む稀勢の里。先場所も跳ね返された白鵬を倒しての優勝が望まれる。
かつて、元横綱武蔵丸の武蔵川親方が、稀勢の里について語っていたことがある。
「今ひとつ皮が剥けないのは、師匠を亡くしたことが大きいのかもしれないね」
2011年11月、九州場所。稀勢の里が大関昇進したこの場所直前に、師匠である鳴戸親方(元横綱隆の里)が急逝した。武蔵川親方曰く、
「横綱大関になっても、たとえば成績が振るわない時、自分では原因もわからず、どこか歯車が狂ってるような時……。やはり師匠の一言に気づかされ、救われるものだったりするんだよ」
先の3月春場所では、初の綱取りが掛かった琴奨菊が期待はずれの結果に終わり、その夢はあえなく潰えた。代わって稀勢の里が、俄然注目を浴びることになる。白鵬に36度目の優勝を許したものの、千秋楽まで優勝争いに絡み、13勝2敗で「準優勝」に値する好成績を残した。この5月が綱取り場所となるかについて八角理事長は、「周囲を納得させる内容次第」と含みを持たせている。