ブックソムリエ ~必読!オールタイムベスト~BACK NUMBER
『夜間飛行』
思想と行動の人が描いた、飛行小説の傑作を新訳で。
text by
馬立勝Masaru Madate
photograph bySports Graphic Number
posted2017/11/21 07:00
『夜間飛行』サン=テグジュペリ著 二木麻里訳 光文社古典新訳文庫 540円+税
本書の著者は『星の王子さま』でおなじみだろう。作家であり、パイロットであり、思索家であり、行動の人だった。著作のほとんどがパイロットを扱った作品だが、本書がベストだ。十時間ほどの一夜の出来事が百二十五ページに緊張感一杯で詰まっている。著者の思想と行動とが行間から読み手に強く訴えてくる。
第一次世界大戦終結後間もなく、郵便飛行事業が起こった。スピードが命の郵便事業は戦争で発達した航空機に目を付けたのだ。しかし、航空管制の施設も技術も持たない当時は、夜間飛行は大冒険だった。夜間飛行を止めれば、夜も運行する鉄道便や船便に負ける。新事業は危険に満ちた冒険の日々で前進するしかない。