Before The GameBACK NUMBER
トレーナーは孤独なのである。
~たとえボクサーが、ファンが、後援者が
喜ばなくてもタオルを投げる時がある~
text by
藤島大Dai Fujishima
photograph byKYODO
posted2017/09/02 17:00
8月15日WBC世界バンタム級タイトルマッチ4R、山中慎介を抱きかかえる大和心トレーナー。
米国の女性作家、ジョイス・キャロル・オーツは、ボクシングのリングをこう書いている。
「一国の法律が適用されない伝説的な空間のひとつ」(『オン・ボクシング』)
そこでは競技ルールにより殴打が認められる。想像したくないが死ですら「あってはならぬがありうる」範疇の出来事だ。
だからこそボクサーの生還場所でもあるコーナーのトレーナーは選手の安全と健康に心を砕く。
山中慎介、メキシコ人、ルイス・ネリの連打にさらされ、ロープに押しやられる。リングサイドのボクシング記者なら、こういう場合は劣勢の側の尻を見る。反撃の力を残していてもロープに座ると危ない。レフェリーがストップに踏み切るサインとなるからだ。