Before The GameBACK NUMBER
華麗で、ときに泥臭く。
~平尾誠二は「ミスター・ラグビー」に
収まらない複雑な「個」だった~
text by
藤島大Dai Fujishima
photograph byNaoya Sanuki
posted2016/11/17 08:00
日本代表キャップ35。第2回ワールドカップで宿澤ジャパンの初勝利にも貢献した。
京都に『五條長兵衛』という漬物と佃煮の店がある。うまい。
そこの主人が言った。
「タックルする。そう決めたら激しかった。ああいう天才肌の人って、ジャージィが最後まで汚れないイメージがあるでしょう。そうではありませんでした」
平尾誠二を語っている。
突然のようにラグビー好きを虚しさが襲った。その53歳の死に際して、本稿は、現役時代の勇姿への追慕をこめて「敬称略」を通すのを許していただきたい。
五條長兵衛主人、中村隆夫は若き日、本田技研鈴鹿ラグビー部(現・ホンダヒート)のバックスとして関西リーグで神戸製鋼と戦った。「平尾さんとは3試合」。いっぺん雨の日があった。