Before The GameBACK NUMBER
アリには地球のすべてが街だった。~アリは変わらない、変わったのは時代と評価~
text by
藤島大Dai Fujishima
photograph byBob Gomel/Getty Images
posted2016/06/22 08:00
アリ22歳。1964年2月24日、世界ヘビー級統一王者ソニー・リストンとのタイトルマッチ前夜の表情。
消せない記憶を世界に刻みつける。しかし、本人の記憶はへっちゃらで屈折する。それが芸術家だ。それがファイターだ。それがカリスマだ。それが天才なのである。
モハメド・アリ、若きカシアス・クレイは、生まれ育ったケンタッキー・ルイビルでの人種差別に憤り、ローマ五輪の金メダルをオハイオ川に投げ捨てた。アリをアリであらしめた逸話だ。
どうやら嘘である。ただし世界(そう記すしかないのだ)が信じたのも無理はない。
ローマから故郷へ凱旋した15年後、1975年に出版された自伝『The Greatest, My Own Story』にアリその人の述懐がある。