【NSBC補講I】 池田純のスポーツビジネス補講BACK NUMBER
稀勢の里引退後の、国技館と大相撲。
断髪式を盛り上げる仕掛けが見たい。
text by
池田純Jun Ikeda
photograph byKyodo News
posted2019/02/06 07:00
稀勢の里は初場所4日目を前に涙の引退表明で土俵を去った。今後は荒磯親方として後進の指導に当たる。
稀勢の里ちゃんこがあっても。
でも、そのわずか1週間前まで綱を張っていた、稀勢の里の引退というものが、まるでなかったかのような雰囲気に少なからず寂しさを覚えました。
言わずもがなですが、引退というのはファンにとっても大きなイベントの1つです。応援している選手の最後の花道を自分も祝いたい、それまでの活躍を労いたい、というのはファン心理の重要な要素。下世話な話かもしれませんが、そうした応援の感情とグッズの購買をつなげることもスポーツビジネスでは大切なことです。
今回の引退でも、例えば瓶ビールに稀勢の里のラベルを貼って売り出したら、みんな買ってみたくなったり、あるいは瓶を持って帰りたくなったりするかもしれません。「稀勢の里が愛したちゃんこ」と題していつもより豪華なちゃんこを500円くらいで売ってみてもいいかもしれません。
好きな味、好きな具、そういったファン心をくすぐる商品を提供する、良い機会でもあります。
三浦大輔の引退時に考えたこと。
こうしたアイデアを申し上げると、「きみは伝統をわかっていない」といった類の批判を受けることがしばしばあります。もちろん他の力士たちに配慮した場所運営が必要ですし、伝統の持つ意味も理解しているつもりです。
これらはあくまでもアイデアであって、本当に実現させるためには様々なハードルや条件など、乗り越えるために考えなければならないことは山ほどあることは承知しています。でもすべては、ひとつのアイデアから始まるのです。
私がこのような突拍子もないように見えるアイデアを考えるのは、引退のような大きなイベントをコアなファンに喜んでもらうだけでなく、ライトなファンにも応援してもらういい機会だと考えているからです。
私が横浜DeNAベイスターズの球団社長だった頃、「ハマの番長」こと三浦大輔投手の引退に際して、横浜市内に「永遠番長」と銘打った広告を大々的に展開しました。DeNAファンの方々だけではなく、横浜に住んでいる方々など地域を巻き込んでこの一大イベントを盛り上げたかったからです。