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<引退ドキュメント>
稀勢の里「最後の三日間」

posted2019/02/05 06:00

 
<引退ドキュメント>稀勢の里「最後の三日間」<Number Web> photograph by Takashi Shimizu/JMPA

text by

田井弘幸

田井弘幸Hiroyuki Tai

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photograph by

Takashi Shimizu/JMPA

 時代と国民が求めた第72代横綱が土俵を去った。
 遅すぎた。もっと見たい。引き際に賛否が渦巻く。
 最後の三日間から見えた寡黙な横綱の心身の葛藤を、入門当時から取材を続けてきた記者が描いた。

 東京都内で稀勢の里が一人で暮らすマンション高層階の部屋からは、天気が良い日は東京スカイツリーがくっきりと見える。その向こうには、うっすらと富士山までがそびえる。青空に溶け込んだ景色は見とれるほどに美しく、思わず小さく手を合わせる時もあるという。「晴れている日は本当にきれい。朝は必ずといっていいほど、窓から見ている」と言ったのは、昨年12月下旬のことだ。土俵人生の岐路に立たされていた日本出身横綱の一日は、日本が誇る頂への静かなる願いから始まっていた。

 2019年1月13日。角界の正月を告げる大相撲初場所は異様なムードに包まれながら、幕を開けた。絶大な人気を誇る稀勢の里が進退を懸ける。序盤戦から負けが込めば力士生命は一気に極まる可能性があるだけに、初日の結果は命運を握っていた。

【初日】●御嶽海(押し出し)

 東京都江戸川区東小岩の田子ノ浦部屋。運命とも言える初日の朝は、新聞やテレビなど報道陣20人近くが詰めかけた。だが師匠の田子ノ浦親方(元幕内隆の鶴)の意向により、今場所は千秋楽まで稽古は非公開に決定。いきなり張り詰めた空気が漂う中、部屋関係者によると稀勢の里は四股、すり足などの基本運動で汗を流した。

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